談話室

▼▽「山形市の七日町通り周辺に300席程度の劇場が造れないかと、本気になって考えています」。15年前のことになる。元日向け本紙特別紙面のための対談中、劇作家井上ひさしさん(川西町出身)が突然切り出した。

▼▽対談相手は東京大大学院教授だった大沼保昭さんである。国際法学者の大沼さんは、戦争責任を裁いた東京裁判の研究で知られる。井上さんはこの裁判を題材にした演劇3部作を執筆する際に大沼さんの研究成果も参考にしており、交友があった。対談はその縁で実現した。

▼▽七日町は、少年時代の井上さんには「輝いていた」。大沼さんが生まれ育った街でもある。2004年の元日に対談が載ると劇場構想は2人の熱意に共感した市民も巻き込んでいき、後にシベールアリーナという形で現実になった。その大沼さんが16日、72歳で亡くなった。

▼▽大沼さんは昨年本紙に寄稿し、学者人生を「掟(おきて)破り」と振り返った。確かに国から煙たがられそうな戦争責任をテーマに選んだり、慰安婦問題の解決を目指し実践運動にも踏み込んだりした。半面古里への思いは守り続けていた。会話の中で時折漏れ出た山形弁口調が蘇(よみがえ)る。

(2018/10/20付)
最新7日分を掲載します。
  • 10月20日
  • ▼▽「山形市の七日町通り周辺に300席程度の劇場が造れないかと、本気になって考えています」。15年前のことになる。元日向け本紙特別紙面のための対談中、劇作家井上ひさしさん(川西町出身)が突然切り出した。[全文を読む]

  • 10月19日
  • ▼▽徳川家康の居城として有名な駿府城跡(静岡市)から豊臣秀吉が配下に築かせた別の城の遺構が見つかった。史料がなく「幻の城」とされてきた豊臣方駿府城と確認できた根拠は金箔(きんぱく)を施した瓦と石垣の積み方だった。[全文を読む]

  • 10月18日
  • ▼▽人をだます事件は昨今珍しくないが、中にはドラマのような例もある。大正時代に断絶した宮家を名乗ってちゃっかり結婚披露宴を開き、多額の祝儀をだまし取った有栖川宮(ありすがわのみや)詐欺事件もその一つ。2003年に起きた。 [全文を読む]

  • 10月17日
  • ▼▽引き戸を開けて大きな声で来店を告げるのが慣習だった。「買ーうー」。白髪をひっつめにしたばあちゃんが奥から出てくるまでには時間がある。その間に考える。何を買おう。昭和の一銭店(駄菓子屋)の思い出だ。 [全文を読む]

  • 10月16日
  • ▼▽哲学者木田元(げん)さんは中央大で教職に就き、先輩に導かれて名店を回るうちにそばの味を極めようと思った。大学が当時あった東京・神田界隈(かいわい)は「そばの聖地」。老舗ぞろいで、そばを食しては先輩の蘊蓄(うんちく)に耳を傾けた。 [全文を読む]

  • 10月15日
  • ▼▽高校時代の同級生と久しぶりに会う機会があり、居酒屋で歓談した。卓上こんろの牛鍋が食べ頃になったので取り分けようとしたら「俺、煮た肉が苦手なんだよね」。焼いたらおいしく食せるのに、煮ると駄目らしい。[全文を読む]

  • 10月14日
  • ▼▽ミッシングリンク(失われた環(わ)/鎖)は高速道路の未整備区域を示す際に多く使用される言葉だが、本来は動物進化の記録の空白を指す。その間を埋める化石は古生物学の貴重な資料であり、発見は大ニュースとなる。[全文を読む]

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