山形にフル規格新幹線を

交流人口(5) 東北観光圏形成の鍵

2017年08月05日
 インバウンド(海外からの旅行)を含め、観光で東北は「一人負け」といわれている。各県が独自に打ち出す誘客戦略は限定的で、一体感の醸成は深まらないままだった。しかし近年、東北を一つのブランドとする広域観光圏の考え方が広がりつつある。奥羽、羽越両新幹線整備で生まれる高速鉄道ネットワークは、新潟県を含む東北圏の形成を強力に後押しする。

 東北6県、新潟県が合同で東北圏を海外に売り込むトップセールスが先月、香港で繰り広げられた。東北観光推進機構(仙台市)が主催し、吉村美栄子知事など各県の知事、副知事が参加。香港政府や観光関係団体に東北の魅力をアピールし、現地関係者とインバウンド拡大に向けて意見を交わした。

 トップセールスは昨年の台湾に続いて2回目。各県トップの連携による海外プロモーションは全国的に珍しい。同機構の紺野純一専務理事推進本部長は、非常に大きなインパクトがあったとし「ようやく東北にも一体感が生まれつつある」と話す。

 2020年東京五輪・パラリンピックを控え、拡大を続けるインバウンドだが、東京圏や関西エリアなどと比べ、東北は大きく出遅れている。知名度の低さやPR不足、国際線の直行便が少ないことなどが背景にある。県単位の発信力は小さく、海外への影響力も限定的で、オール東北の力が求められている。

各県知事らによる東北観光のトップセールス。広域連携の取り組みが広がってきている=今年7月、香港(県提供)
各県知事らによる東北観光のトップセールス。広域連携の取り組みが広がってきている=今年7月、香港(県提供)
 国内旅行者と同様に、訪日外国人旅行者の旅行形態も団体型から個人型に変化しつつある。会員制交流サイト(SNS)など情報通信技術(ICT)の発達でニーズが多様化。多くの旅行者は県境を越えて観光を楽しむようになった。複数の観光素材を組み合わせた歴史や文化、景観などのストーリー性を説得力に、相乗効果を生み出す仕組みづくりが急務となる。

 広域化する行動範囲の中、移動手段を見つけ出すツールとなっているのがネット検索。公共交通機関の鉄道、とりわけ「新幹線」が検索ワードになる。高速鉄道網を核とした広域観光圏の誕生は、東北全体に周遊する人の流れを生み出す。東北圏をループ状に結ぶ奥羽、羽越両新幹線が必要不可欠なピースだとされる理由だ。

 観光庁は、訪日外国人旅行者の地方への誘客を図るため、広域観光周遊ルートの認定を進める。東北観光推進機構が策定した「日本の奥の院・東北探訪ルート」もその一つ。東北各県の観光地を巡る複数のモデルコースを提案し、2020年までに観光消費額1059億円、外国人延べ宿泊者数200万人の目標を掲げている。

 本県には蔵王、月山をはじめとする豊かな自然、国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に登録された新庄まつりなどの伝統文化、豊富な食材と三拍子がそろう。その潜在力の高さを同機構は評価。紺野専務理事は、月山の夏スキー、蔵王の樹氷など雪を通じた観光が世界に通用すると説明。「スノーブランド」を生かした東北観光のけん引役を、本県に期待する。

 フル規格新幹線による観光回廊は多様なルートを生み出し、本県の観光地に新たな価値をもたらす。紺野専務理事は「新幹線整備にはメリット、デメリットがある」と慎重な姿勢を示した上で、「もっと首都圏から東北に入ってきてもらわないといけない。経済面も含めて考えれば(鉄道の)速度向上は大事な要素だ」と語る。

 歴史的背景や厳しい気候風土に培われ、東北地方は独自の文化を形成してきた。本県は出羽三山に象徴される精神性、最上川舟運と北前船による紅花、青苧(あおそ)の生産や雛文化、戦国時代に躍動した最上義光や上杉景勝、伊達政宗らとのゆかりの深さなど、観光客を引きつける素材がある。高速交通網の充実は、東北圏のつながりを強め、本県の魅力を一層輝かせる。

(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

=テーマ「交流人口」おわり

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