やまがた観光復興元年

第1部・逆境を乗り越える[7] 再起誓う肘折温泉

2014年01月09日
雪に覆われた大蔵村の肘折温泉。肘折希望大橋の完成と関係者の強い思いによって観光客増が期待される
雪に覆われた大蔵村の肘折温泉。肘折希望大橋の完成と関係者の強い思いによって観光客増が期待される
 大蔵村肘折の「肘折希望(のぞみ)大橋」。地滑り災害で落ち込んだ肘折温泉街の救世主として建設中から注目を集め続けた。旅館・ゑびす屋の社長で同温泉旅館組合の柿崎泉組合長(58)は「新たな名物として誘客に生かしたい」と期待を寄せる。

 2012年4月に発生した大規模地滑りで、主要地方道の一部が崩落し、通行止めとなった。客を運ぶ動脈が寸断された影響は大きかった。復旧まで迂回(うかい)路は確保されたが、被災地との風評や交通の不便さを嫌ってか客足は落ちた。

 復旧の見通しが立たない中、旅館組合のメンバーは連日集まり「肘折温泉は健在」をアピールする方策を練った。結論は「困っている姿を見せない」だった。柿崎組合長は「客に余計な気遣いをさせないよう心掛けた」と話す。この思いは地域全体に広まった。肘折地区自治会の須藤修一代表(62)は「旅館組合だけでなく地区住民を挙げ、この意識を共有し、実践した」と振り返る。

 温泉街に来る客の目的は癒やし。受け入れる側が苦しそうな姿を見せては客に対して失礼との気持ちが強かった。それが「おもてなしの心」と考えた。災害に負けたくないとの意地もあった。

 ルートの完全復旧には1年7カ月を要した。その間、確かに客数は減ったが、関係者は口をそろえる。「乗り切った」と。須藤代表は「今では達成感の方が強い」と語った。

観光客に村の特産品をアピールする土産店。肘折希望大橋の完成もあり、年末年始には多くの宿泊客が訪れた=大蔵村肘折温泉
観光客に村の特産品をアピールする土産店。肘折希望大橋の完成もあり、年末年始には多くの宿泊客が訪れた=大蔵村肘折温泉
 旅館や土産店が軒を連ね、旧肘折郵便局舎など名所が点在する大蔵村肘折の中心部を人力車が軽快に走る。雪深い温泉街に春の訪れを告げる恒例行事だ。ほかにも名物の朝市や正月の「さんげさんげ」など、1年を通じてさまざまなイベントが開かれる。「こうした催しは、できるだけマスコミに取り上げてもらえるよう積極的に情報発信している」。温泉旅館組合の柿崎泉組合長は語る。

 地滑り災害の発生後もこの方針は変えなかった。当然、問い合わせがあった客には迂回(うかい)路の道幅が細く、急カーブが多いことを十分に説明した。それでも来てくれる人に対し、できる限りのもてなしをしたかった。

■示した心意気
 やむを得ず開催時期を遅らせたり、規模を縮小したりしても例年の観光イベントは全て開催した。「災害に負けずに頑張っている」。例年通りの開催にこだわったのは「心意気を広く示したかったから」と関係者は口をそろえる。

 昨年11月30日に行われた「肘折希望(のぞみ)大橋」の開通式。柿崎組合長は式典会場で、冬の迂回路で見た、ある光景を思い出していた。県外ナンバーの乗用車が雪で立ち往生し、後続の運転手らがその車を押していた。何とか雪の塊を抜け出すことができた。動けなくなった車の運転手は何度も頭を下げていた。「すみません、すみません」と。

 「謝るのはこっち(地元)の方だ。せっかく来てもらったのに嫌な思いをさせてしまった」。もう、こうした思いはしたくはない。だからこそ橋の開通は温泉街の悲願だった。

■取り戻す時間
 今年はその希望大橋を生かした観光誘客に力を入れる。最大の特徴である骨組みの「ラーメン」構造にちなんだ「流しラーメン大会」や橋をコースとする「タイムトライアル」などだ。地滑りから完全復旧までに要した1年7カ月を取り戻そうとする動きは徐々に加速し、着実に広がりつつある。
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