やまがた観光復興元年

第3部・変貌する温泉地[7] 資源の新たな活用

2014年04月04日
「福祉のひろば冨士の湯」の源泉かけ流しの大浴場。一歩入ると、ひのきの香りが漂う=天童市
「福祉のひろば冨士の湯」の源泉かけ流しの大浴場。一歩入ると、ひのきの香りが漂う=天童市
 大浴場はひのきの香りが漂い、源泉かけ流しの湯が体を温める―。高齢者専用賃貸住宅とデイサービス事業を展開する「福祉のひろば冨士の湯」(天童市)自慢の風呂だ。近年、県内でも高齢者施設での温泉利用が進んでいるが、「源泉かけ流し」の施設はそうはない。天童温泉の発祥となった旅館「冨士の湯」が後継者不足などで施設を解体したのに合わせ、2008年10月に建設された。

 金融機関からの勧めで事業計画を描いたのは小野建設(山形市)だった。「貴重な温泉資源を何とか生かしたい」。この思いで小野和行社長(51)は動いた。本業重視が基本方針で経営の多角化は考えていなかった。しかし、▽天童温泉篠田病院に隣接する▽公園やショッピングセンターが近い―などの立地が好条件で、周囲の宅地開発を同社が手掛けたこともあり、決断した。

 2億6千万円余りの建設費用は、冨士の湯のオーナーだった山口弘さんが負担し、新たな施設も山口さんが所有。この施設を小野建設の子会社で不動産業のショーエー・アドバンス(山形市)が借り上げ、管理。専門知識が必要な利用者の生活支援は、庄内を拠点に介護事業を展開する「福祉のひろば」(酒田市)に委託した。

 源泉活用にとどまらず、オーナーは安定した賃料収入が、ショーエー・アドバンスは入居者からの家賃と食事の提供による収入が見込め、小野建設は施設建設の受注ができるという、三者ともメリットを受けられる仕組みを構築できた。

 宿泊客の減少や後継者不足で閉鎖する旅館が増える中、旅館や源泉を、それまでとは別の形で活用する例が県内でも増えている。

 「信頼関係を築けたことが大きかった。誰かが損をするようではうまくいかなかった」。天童市の「福祉のひろば冨士の湯」を手掛けた小野建設の小野和行社長は振り返った。高齢者専用賃貸住宅は37戸(1K22平方メートル、月9万6千円から)で、温泉個室付きの広い部屋もある。開所から4年目ごろからは、家族も無料で利用できる源泉かけ流しの温泉や、好立地の評判が広がり、満室に近い状態を保つ。

■地域と関係良好
 温泉街に異業種が参入する形となったが、温泉団体関連の会合には、人脈のある山口さんが出席することで、地域との関係も良好だという。新たな雇用を生んだほか、入居者の半分は介護保険のサービスを受けていないため、周辺の施設で買い物や食事をするなど地元の消費拡大にもつながっている。

     ◇

上山市中心部にある山城屋。歴史的建造物を地域活性化に結び付ける企画が展開されている=同市湯町
上山市中心部にある山城屋。歴史的建造物を地域活性化に結び付ける企画が展開されている=同市湯町
 上山市湯町にある登録有形文化財の温泉旅館山城屋。同市出身の歌人斎藤茂吉にゆかりのある建物で、昨秋、市商工会青年部が婚活イベントを展開した。市内外の男女計約70人が集まって食事を楽しみ、17組のカップルが成立。歴史的建造物の新たな活用法を示した。

 現在、山城屋を所有するのは同市葉山の旅館「葉山館」(五十嵐伸一郎社長)。明治末の創業とされる山城屋は、斎藤茂吉の実弟直吉が養子に入って経営した歴史を持つ。母屋は1922(大正11)年に建てられた木造2階建てで、約2300平方メートルの敷地に蔵と庭園も備える。

■「もったいない」
 2010年の閉館後、土地と建物を取得したのが葉山館だった。「湯町は市中心部に位置し、かみのやま温泉発祥の地とされる。観光客が散策する上で、放っておくのはもったいないと思った」と五十嵐社長。当初は温泉旅館として再生する計画だったが、11年の東日本大震災に伴い変更。各種団体に貸し出すなど、にぎわい創出の舞台として運営している。

 昨年8月3日から1カ月間、葉山館はかき氷の販売イベントを展開した。1日平均で約100人が来場する盛況ぶり。「風通しの良さもあり、冷房がないのに誰も怒らない。逆に『昔はこんな感じだった』と懐かしんでくれた」。そう話す五十嵐社長の元には今、上山市産のワインPR事業や結婚式の会場など、地域活性化につながるようなアイデアが続々と寄せられている。
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