やまがた観光復興元年

第4部・変わる情報発信[1] 観光パンフからの脱却(上)

2014年04月19日
トレッキングの季節間近の鳥海山。庄内は観光資源に恵まれているが全国的な知名度は高くない。戦略の構築が行われている=酒田市石名坂
トレッキングの季節間近の鳥海山。庄内は観光資源に恵まれているが全国的な知名度は高くない。戦略の構築が行われている=酒田市石名坂
 観光パンフレットは作りません―。庄内2市3町と戸沢村、それに事業者で組織する庄内観光コンベンション協会は2012年秋、こう宣言し、観光関係者を驚かせた。それは、情報発信の在り方そのものの転換を意味していた。

 「観光パンフレットは、具体的にどのくらいの誘客効果があるのか?」。12年4月に開かれた協会の会議で民間事業者から出されたこの疑問が全てのきっかけだった。どの地域でもあるだろう疑問で、答えるのは困難だ。しかし、この月、協会事務局長に就任した県庄内総合支庁観光振興室長の大通(だいつう)薫さん(52)=現県工業戦略技術振興課主幹=には、聞き流せない疑問に思えた。

 振り返ってみれば、毎年無数の観光パンフレットが作られていた。グリーンツーリズム、高速道路の利用促進などを目的としたものを含めればその数はさらに膨らむ。多くの場合、地元の観光施設などで配布されているため、既に来ている人にしか見てもらえない。

 「旅行を検討中の人に着実に届けられ、かつ効果を測れる方法はないか」。模索する大通さんに、協議会員でもある石井祐司ANA庄内支店長が観光戦略・企画を手掛けるトラベルジップ(東京都)を紹介。話を聞き、気付かされたのが、観光戦略の構築の必要性だった。

 個人旅行が主流になり、インターネットやスマートフォンの普及が進む中、観光情報の発信方法が変わりつつある。調査・研究機関の東北活性化研究センター(仙台市)が2013年度に実施した調査では、過去3年間に東北を訪れた観光客の65%が、インターネットや電話で宿泊などを自ら予約していた。誘客には個人客に情報を届ける仕組みが不可欠だ。現地での適切な案内も重要性を増している。山形新聞、山形放送の8大事業「やまがた観光復興元年」第4部は情報発信の在り方を探る。

 行政や観光団体の情報発信は、全ての観光客を対象に、同じように行われるのが一般的だ。しかし、それでは知名度や予算のある観光地に負けてしまう。「限られた予算と人を効率的に使うには、他地域に勝てる競争力とマーケットのある素材に絞り込んだPRが必要だ」。観光戦略・企画を手掛けるトラベルジップ(東京都)からこの指摘を受け、庄内観光コンベンション協会は若手の観光事業者や行政担当者らで議論を開始した。2012年夏のことだった。

観光パンフレットはどの地域でも数多く作られている。庄内観光コンベンション協会はウェブ対策を強化し、新規作成をやめた=三川町・県庄内総合支庁
観光パンフレットはどの地域でも数多く作られている。庄内観光コンベンション協会はウェブ対策を強化し、新規作成をやめた=三川町・県庄内総合支庁
■首都圏対策
 全国がライバルになる首都圏対策として、庄内が勝てるテーマに▽出羽三山を柱にした「巡礼(修験道)」▽鳥海山などでの「トレッキング」▽地酒を含めた「美食巡り」▽美しい風景を生かした「写真・スケッチ」―を選び出した。

 このカテゴリーの個人客に売り込む手法として、1ページを作れば何万人にも見せられるウェブの活用を選択。予算を確保するため、効果を測れなかった観光パンフレットを新規で作らない方法が浮上した。協会の12年度事業計画は総会を経て既に決定していたが、予算の使い道を変更するため、協会事務局は、構成する庄内2市3町と戸沢村の首長らを直接訪ね、説得して回った。

 観光情報発信の柱の一つだったパンフレットからの脱却に驚く首長もいた。「限られた予算を最大限生かすには選択と集中が必要。ウェブも、作って終わりではなく効果を検証して改善を重ねる」。協会事務局長で県庄内総合支庁観光振興室長(当時)の大通薫さん(52)はそう伝え、理解を得ていった。

■総額を維持
 そして12年10月19日、協会は「観光パンフ作りません宣言」を含む観光戦略を発表。既存パンフレットのうち必要なものは増刷するものの、新規の作成をやめた。12、13年度の2カ年で既存ホームページの全面リニューアル費870万円を捻出。その後の運営は年300万円程度で可能だった。13年度でみると、パンフレット制作予算は約20万円、ウェブ関連費用(リニューアル費の一部を含む)は約540万円。使い道の転換で予算総額はそのままに必要経費を確保できた。

 さらに、庄内の観光資源が認知されている県内の他地域や、隣県などマイカー圏内への情報発信は首都圏対策とは別に展開することに。地元の新聞や雑誌に対し、旬の食材やイベントの事前情報などの小まめな提供を徹底し始めた。

 何を、どこに、どうやって売るのか。これを明確にした観光戦略に基づく行動の第一歩だった。
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