やまがた観光復興元年

第4部・変わる情報発信[3] 観光パンフからの脱却(下)

2014年04月21日
庄内観光コンベンション協会のウェブを担当する職員。どのページが見られているかなどを分析し、より効果的な情報発信につなげている=三川町・県庄内総合支庁
庄内観光コンベンション協会のウェブを担当する職員。どのページが見られているかなどを分析し、より効果的な情報発信につなげている=三川町・県庄内総合支庁
 庄内2市3町と戸沢村の行政、観光事業者で組織する庄内観光コンベンション協会のウェブ戦略は、さらに前に進む。どのページが、どの地域で、どれくらい見られているのかを分析し、より効果的な情報発信へとつなげているのだ。

 例えば、特定のワードで検索した際に協会サイトがトップページに表示されるリスティング広告を仕掛けるエリア。昨年5月からの運用当初は首都圏のみだったが、隣県からのアクセスが増えたと分かると、宮城、福島、新潟県も加えた。

 データ解析により、庄内が全国と勝負できるテーマとして絞り込んだ巡礼、トレッキング、美食巡り、写真・スケッチの各ページのうち、最もアクセス数が多いのが、巡礼関連の情報をまとめた「ご利益ページ」であることが分かった。同時に、閲覧者が短時間で離れてしまうことも明らかになった。

 このページへのアクセス数は昨年5月が1757件で、7月は7593件と増加したが、この時期の閲覧時間は29~42秒。トレッキングの52~74秒などと比べると短かった。「閲覧者が求める情報とは異なる内容なのではないか」。この視点で見直し、山伏修行の霊場、即身仏など、いわゆる「ディープ」な内容が前面に出ていることが影響していると考えた。そこで、パワースポットの紹介や五重塔のライトアップデートなど観光的要素の強い情報を加えて軟らかい内容に変更し、ゴールデンウイーク前にアップする予定だ。

 協会が目指した「効果を検証できる仕組み」が、こうした改善を可能にした。

 庄内観光コンベンション協会は、ウェブを柱にした個人の誘客とは別に、対面で行う“アナログ”の旅行会社対策も方針転換した。従来は各社を同じように訪問していたが、庄内が強い分野で顧客を持つ会社に重点を置いた。

 例えばA社は、トレッキングを趣味とする10万人の顧客リストを持つ。この会社に、地元の山岳ガイドらと練り上げたオリジナルコースなど具体的な提案を行いながら訪問を重ね、鳥海山トレッキングの商品販売にこぎ着けた。今後は、美食や写真の専門雑誌などへの働き掛けも強める。いずれも、その先にいる「庄内の素材に興味を持つ観光客」に情報を届けるためだ。

 「巡礼で考えてみても、庄内は出羽三山という素晴らしい素材がありながら、あまり知られていないために興味のある人の多くは四国に行っていた。一連の仕掛けで、庄内が選択肢に入るようになった」。協会の観光戦略構築を手掛けたトラベルジップ(東京都)の大泉敏郎社長(45)は言う。

鳥海山南麓での新緑トレッキング。庄内の観光資源に興味を持つ人に的確に情報を届ける取り組みが続く=酒田市
鳥海山南麓での新緑トレッキング。庄内の観光資源に興味を持つ人に的確に情報を届ける取り組みが続く=酒田市
■団結して活用
 今後の課題は何か。「この戦略を継続すること、『庄内の共有財産』として作ったサイトをみなで活用すること、戦略に沿って多様な観光施策を展開すること」。今年3月まで同協会事務局長・県庄内総合支庁観光振興室長を務めた大通(だいつう)薫さん(52)=県工業戦略技術振興課主幹=と大泉社長は声をそろえる。

 事務局が県庄内総合支庁内にあるため、公務員の異動によってノウハウが途切れたり方針が変わったりしては意味がない。サイトも地域ごとに乱立するよりは、広告事業を含め、団結して活用した方が効果は高まる。巡礼地としての成長を目指すなら、修行体験者用に装束を販売する店舗や着替えができる場所の整備も必要だ。

■全国モデルに
 こうした取り組みで実際にどの程度観光客が増えたか、最終的な成果を測ることはまだできない。が、従来より効果的に情報発信できていると関係者は手応えを感じている。全国約40カ所で同様の事業を手掛ける大泉社長は力を込めた。「庄内ほど明確に何を、どこに、どう売るか、そのために何をやめるのかという戦略を構築できている地域は珍しい。これからが正念場。10年継続すれば、全国の地方観光のモデルになり得るだろう」
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