やまがた観光復興元年

第4部・変わる情報発信[7] 現地での案内(中)

2014年04月25日
大正時代風の衣装で観光客に応対する戸津奈穂子さん(右)。銀山温泉観光案内所に求められるのは東北全体の広域情報だ=尾花沢市
大正時代風の衣装で観光客に応対する戸津奈穂子さん(右)。銀山温泉観光案内所に求められるのは東北全体の広域情報だ=尾花沢市
 東日本大震災後に落ち込んだ観光を復興させるため、東北全体を博覧会場に見立てた「東北観光博」が2012年3月から1年間にわたって繰り広げられた。計30の主要観光地で官民一体となった誘客活動や交流事業などを展開。観光客アンケートの結果、尾花沢市の銀山温泉が再び訪れたい地域の1位に選ばれた。観光案内人に対する評価もトップ。総合満足度は津軽半島(青森)、田沢湖・角館(秋田)に次ぐ3位だった。

 洋風木造多層の旅館が川の両岸に連なる街並みと時代衣装の組み合わせで大正ロマンを体感してもらおうという銀山温泉組合の新たな試みや、各旅館の企業努力が高評価の要因。尾花沢市観光物産協会の企画力と情報発信力もその支えとなった。キーワードは「広域」。

 協会の銀山温泉観光案内所。旅館をチェックアウトした客がJRへの接続バスの時間を質問し、県外ナンバーの車から降りた人が駐車場の場所を尋ねる。頻繁に鳴る電話は県外からの旅の相談だ。

 「観光客は県境を意識していない」。2009年の案内所開設以来、案内係を務める戸津奈穂子さん(40)は確信を込めて話す。問い合わせの多くは東北各県の観光地までの道順や所要時間。「最近はレンタカーの利用客が増えた。時間にゆとりのある人が東北をめぐる旅をしている」。銀山温泉に関する深い知識はもちろん、自由度の高い旅に合致した広域情報提供が案内所に求められるようになってきた。

山形空港ビルに今春オープンした「旅サロン」。東根市観光物産協会が県内の観光情報を提供する=同市
山形空港ビルに今春オープンした「旅サロン」。東根市観光物産協会が県内の観光情報を提供する=同市
 尾花沢市の銀山温泉観光案内所には喜多方(福島)や平泉(岩手)など県外のパンフレットも備えてある。当初は市内、県内のパンフレットしかなかったが、客の需要を肌で感じた戸津奈穂子さん(40)が各観光協会などから取り寄せている。旅行の計画段階で助言を求められることもあり、自ら各地に足を運んで銀山温泉からの所要時間や見どころなどを取材している。「鹿児島ナンバー、北海道ナンバーは普通に見かける。仙台空港で借りた車で外国人もやってくる」と戸津さん。知名度の高い銀山温泉が、遠方から東北地方への旅の入り口として機能していることを実感している。

 ■ネット情報補う
 市観光物産協会は、銀山温泉の案内所と市中心街の商業施設内にある事務局窓口が連携して情報を発信する。協会事務局員の阿部かおるさん(50)は、高度な知識と接客力を持った観光ガイドとして県が認定する「山形の達人」でもある。季節ごとに尾花沢の魅力を味わえる体験ツアーを提案し、自ら案内役を務める。観光情報はインターネットの検索システムで容易に入手できるが、阿部さんは「グーグル(検索サービス)は全てじゃない。ネット情報では足りない部分を埋めるのがわたしたちの仕事」と力説する。

 その際にも広域連携がポイントになるという。市観光物産協会職員として「究極の目的は尾花沢を売り込むこと」だが、そのためには互いに潤う関係が不可欠であると考え、他自治体の観光情報も積極的に提供する。東根市など近隣自治体の観光関係者や生産者らと積み重ねた交流から、サクランボの花見をしながら「つや姫」のおにぎりを食べる旅の構想が生まれた。

   ◇    ◇ 

 山形空港(東根市)の東京便が15年ぶりに2往復を運航、名古屋便が3年半ぶりに就航した3月30日、空港ビル1階ロビーに観光案内所「旅サロン」がオープンした。山形空港ビルの委託を受けた東根市観光物産協会の職員が2次交通や空港周辺自治体の観光案内を行う。まだ利用件数は少ないが、協会の今野征チームディレクターは「本県観光の窓口としての役割を担う」と意欲的。将来、近隣地域の観光資源を結び付けて、旅行業者に山形空港を拠点とする旅行商品を提案したい考えだ。

 ■効果は長い目で
 広域観光の案内は、市への波及効果がすぐに表れるわけではない。人的余裕がない中、あえてこの業務を担うことについて今野さんは「メリットはある」と言い切る。「東根市はサクランボ以外の観光が課題。これからの広域観光ルートの中に、東根の素材が一つでも二つでも入るようになればいい」。観光客にとって行政区域は無意味。客を囲い込むため、手前みその情報だけを発信していた観光案内所は過去のものだ。
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