やまがた観光復興元年

第5部・結ぶ[1] 置賜さくら回廊(上)

2014年05月30日
置賜さくら回廊の中心的存在の一つ、伊佐沢の久保桜(右)。今年は4月下旬に満開を迎え、多くの観光客でにぎわった=4月25日、長井市
置賜さくら回廊の中心的存在の一つ、伊佐沢の久保桜(右)。今年は4月下旬に満開を迎え、多くの観光客でにぎわった=4月25日、長井市
 数百年、千年の時を超え、気品ある姿で人々を魅了する古典桜。これを柱に長井、南陽、白鷹2市1町の二十数カ所の桜の名所をつなぐ「置賜さくら回廊」は、本県の春を代表する観光ルートだ。しかし、古典桜も20年前までは地元でしか知られていない存在だった。資源として光を当て、結ぶことで全国から人を呼ぶ観光ルートに成長した。

 置賜さくら回廊の“生みの親”は、桜保存会の連合組織「置賜さくら会」だ。それぞれに活動してきた五つの保存会が、連携して名木を生かした地域づくりをしようと、1994年に設立。結んだルートを置賜さくら回廊と名付けた。

 組織的な取り組みが始まると程なく、住民の地道な活動と桜の存在は、テレビの全国放送などで報道され、一気に知名度を高めた。

 2001年春に初めてまとめた置賜さくら回廊への観光客(4、5月)は延べ23万7千人。山形市で24、25の両日開かれた「東北六魂祭2014」の観光客26万人(主催者発表)に迫る数だ。住民が思っていた以上に、地域の宝は人々の心をつかんでいた。観光客の受け入れ態勢の整備と誘客促進に力を入れるため、02年には置賜さくら会に2市1町と各観光協会、赤湯温泉旅館組合、山形鉄道、それに県を加えて置賜さくら回廊観光推進会議を立ち上げた。

久保桜、薬師桜と同じく樹齢1200年といわれる草岡の大明神桜。所有者の好意で公開されている=4月25日、長井市
久保桜、薬師桜と同じく樹齢1200年といわれる草岡の大明神桜。所有者の好意で公開されている=4月25日、長井市
 その後も東日本大震災と原発事故前までは順調に客数を伸ばし、10年は31万3千人が訪れた。「さくら会ができたころは、まさかこんなに人がくるなんて思ってもみなかった」。長年、保存活動に参加してきた住民は言った。

 点在する素材を結んだり、連携したりすることでより魅力的な観光資源になることがある。山形新聞、山形放送の8大事業「やまがた観光復興元年」第5部は、何が成功の鍵になるのか、どう課題を乗り越えればいいのか、観光客に響く連携について考える。

 置賜さくら回廊観光推進会議の「母体」になった置賜さくら会。1994年9月の発足のきっかけになったのは、烏帽子山千本桜保存会(南陽市)に、全国で桜の愛護活動に取り組む日本さくらの会から「白鷹に素晴らしい桜の古木がある」との情報が寄せられたことだった。烏帽子山千本桜保存会の会長を務めていた山川章さん(故人)もこの時、初めて白鷹町の釜ノ越桜や薬師桜の存在を知ったという。名木たちは、それほどひっそりとした存在だった。

 「この桜を多くの人に見てもらい、よりよい姿で後世に残したい」と山川さんが伊佐沢桜会(長井市)、釜の越桜保存会、薬師桜保存会、十二の桜保存会(白鷹町)に声を掛け、連合組織を立ち上げた。

■予算不足に直面
 置賜さくら会は地域の桜の情報を掘り起こし、マップの作成を開始。中には、桜の木が立つ土地の所有者から「観光客に勝手に入られると困る」として掲載自体を拒否されるケースもあった。しかし、「地域の宝である」と丁寧に説明を続け、理解を得ていった。発足から半年後の95年3月に最初のマップを発行。現在の「置賜さくら回廊マップ」の基礎となった。

 全国から観光客が集まり始めた一方で、ボランティア組織であるが故に「予算がない」という課題に直面した。当時の予算は各保存会が出し合った10万円程度。マップを欲しいという声は多くなったが、発行できる部数は限られていた。

 突破口をつくったのは当時、白鷹町観光協会事務局長を務めていた馬場誠さん(53)=現アイサイト(山形市)社長=だった。置賜さくら会に観光関係者として唯一加わっており、南陽市議だった須藤清市・現南陽市観光協会長の協力で長井、南陽、白鷹2市1町や県に働き掛けて参加を得た。こうして置賜さくら回廊観光推進会議は誕生した。行政と各組織が負担金を出し合うことで400万円を超える予算を確保。2002年春から桜の保存活動に加え、誘客と受け入れ態勢向上を柱にした活動をスタートした。

■季節の風景一変
 「推進会議ができたことで、市町でバラバラだった取り組みの方向性が一本化した」。馬場さんは広域組織設立の意義を語る。統一デザインの案内板設置や、山形鉄道が運行するフラワー長井線の活用、旅行商品の企画、観光客数の把握などが可能になっていった。

 バス会社、旅行会社も独自の観光商品を販売。山交バス(山形市)は推進会議が発足したころから、山形駅や上山、南陽市内など複数カ所で乗降、名所を巡れるバスを運行。同社以外にも大型バスが多数乗り入れるようになった。置賜の桜の季節の風景は様変わりした。
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