やまがた観光復興元年

第5部・結ぶ[2] 置賜さくら回廊(中)

2014年05月31日
 映画「スウィングガールズ」(2004年公開)や、そのロケが行われたフラワー長井線(山形鉄道)を活用したツアーのヒットは追い風になった。長井、南陽、白鷹2市1町で展開する置賜さくら回廊への観光客はじわじわと増加。多数のマスコミで取り上げられた06年には38万人を突破した。一方で、財政難などから将来行政の助成が打ち切られる可能性があった。もう一つ上のステージに上がるには、地域外との連携が必要だった。

 中でも、首都圏の観光客が主に利用する鉄道での誘客を図るには、長井線に接続するJRとの連携が不可欠だ。「どうしたらJRは応援してくれるのか」。当時白鷹町観光協会事務局長の馬場誠さん(53)=現アイサイト(山形市)社長=は、元JR東日本取締役仙台支社長でJTB常務となっていた清水慎一さん(65)=現観光地域づくりプラットフォーム推進機構会長=に直接、切実な思いをぶつけた。06年4月26日、白鷹町内で開催されたパネルディスカッションでのことだった。

 「それならあの人に相談したらいい」。観光資源としての置賜さくら回廊の可能性を強く感じていた清水さんは、その場でJR東日本仙台支社の担当者を紹介した。JRの動きは速かった。翌春から置賜さくら回廊を核に、置賜8市町全域と上山市をエリアにした観光PR事業「やまがた花回廊キャンペーン」を始めた。

烏帽子山公園の桜。置賜さくら回廊の南の起点になっている=4月23日、南陽市
烏帽子山公園の桜。置賜さくら回廊の南の起点になっている=4月23日、南陽市
 JR東日本と地元自治体、事業者が連携して誘客を図る事業で、同社の重点販売地域(12年まで)にも指定された。首都圏を含めた主要駅にキャンペーンのパンフレットが置かれ、ポスターが掲示された。さくら回廊の情報発信力は格段にアップした。

 JRなどのやまがた花回廊キャンペーンを通じ、アヤメや白ツツジ、バラ、ユリなど多様な花々を活用した観光ルートが再構築され、地域の歴史文化、食も掘り起こされていった。ワイナリーや酒蔵、郷土料理を出す旅館や店と組み合わせることで、旅行商品力も磨き上げられた。

 元白鷹町観光協会事務局長の馬場誠さん(53)は「JRとの連携は大きな財産になった。地域資源を生かした観光とは何たるものか、どう商品化し、どう売るのかを学ばせてもらった」と振り返る。JRの参画を機に、大手旅行会社も次々と旅行商品を造成していった。

■協会の連携、土台
 行政の枠を超えた連携の場合、各市町村が意見を主張し合ってまとまらなかったり、逆に「どこかがやってくれる」と他人任せになったりする。担当者の異動でつながりが薄くなることも大きな課題だ。その点、長井、南陽、白鷹の2市1町で展開する置賜さくら回廊は、情報共有や活動の方向性が一致し、スムーズな運営がなされていると観光関係者の中で評価されている。背景には、持ち回りで事務局を務める各観光協会が、以前から連携を密にしていたことがある。

 土台になったのは、置賜3市5町の観光協会が合同で行っていた専従職員の研修事業だ。交流や意見交換を重ねていたため“隣町”の観光資源や「誰が何に強いか」の情報を共有。人同士がしっかりとつながっていた。入れ代わりの少ない専従職員だからこそ事業に継続的に関わり、ノウハウも蓄積された。

■“隣町”売り込む
置賜さくら回廊の観光ボランティア。それぞれの地域で観光客を案内し、ガイド同士の交流も進んでいる=白鷹町
置賜さくら回廊の観光ボランティア。それぞれの地域で観光客を案内し、ガイド同士の交流も進んでいる=白鷹町
 ここ数年はボランティアガイド同士の交流も進めている。「わがまちの観光」だけを売る市町村が多い中で、この地域は「隣にもこんないい桜、名物がある」と紹介し合う。「もともと資源が豊富ではなく、自分たちのものだけでは満足してもらえない。観光客の立場で考えれば当たり前」。長井市観光協会の今野誠事務局長(50)は言う。

 置賜さくら回廊から発展した「やまがた花回廊キャンペーン」は、県置賜総合支庁に事務局を置く。置賜の枠組みで、各地域の冬の魅力をPRする「山形おきたま 冬のあった回廊」なども展開。人のつながりは強化され、連携しやすい土壌はさらに育っていった。
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