やまがた観光復興元年

第7部・新しい旅のカタチ[1] 音楽による誘客

2014年08月19日
シェーネスハイム金山で開かれている森の演奏会。来場者が緑に囲まれたレストランで音楽と食事を楽しむ=金山町
シェーネスハイム金山で開かれている森の演奏会。来場者が緑に囲まれたレストランで音楽と食事を楽しむ=金山町
 森に囲まれたホテルのレストランにバッハの「アベ・マリア」(グノー編曲)の美しい調べが響く。宿泊客らは音楽と夕食を楽しむ優雅な時間を過ごしていた。金山町のホテルシェーネスハイム金山で開かれている「森の演奏会」。クラシックを中心にソプラノ歌手やピアノ、フルート奏者など県内外で活躍するプロの音楽家を招き、今年(6~10月)は10回の開催を予定する。定員80人の予約制で毎回ほぼ満席だ。

 森の演奏会は、交流人口の拡大を主目的に2007年度に始まった。金山町と町観光協会、シェーネスハイム金山を運営するグリーンバレー神室振興公社(金山町)が主催する。当初は5~8月の土曜に年8回程度だったが、10年度に着任した有路稔総支配人(62)が、11年度から金曜開催に変更。平日の集客につながり、02年度以降減少し続けていた宿泊客数は、増加に転じた。

 12年度からは年10回に拡大。うち2回は宿泊客に限定し、ホタルと星空観賞も行う。自然豊かな環境を生かし、音楽プラスアルファの魅力を演出する。

 新庄市や庄内地方、宮城・秋田の隣県、東京都内などからシニアの夫婦や子ども連れ、カップルが詰め掛ける。仙台圏から毎年通うファンもおり、3割程度がリピーター。評判を聞き付けて足を運ぶ新規客も多い。料金は約1時間の演奏にバイキング夕食が付いて2500円。宿泊と朝食を加えた特別プランは7600円だ。低料金のため演奏会そのもので利益を上げるのは難しいが、リピーターの確保、新規客の開拓につながっている。

 売り上げを伸ばすことはもちろん、維持するのも難しい時代。「満足してもらえれば、お客さまがお客さまを呼んでくれる」と有路総支配人。森の演奏会は、選ばれる理由の一つだ。

 東北を代表するプロオーケストラの一つ、山形交響楽団を生かした誘客事業も県内で展開されている。2012、13年度に実施されたのが、温泉地などでの演奏会。かみのやま(上山市)赤湯(南陽市)肘折(大蔵村)蔵王(山形市)湯野浜(鶴岡市)の各温泉と、酒田市内のホールや宴会場で開かれた。フルオーケストラの演奏を無料で聴けるとあって、6カ所の計11日間で2200人超が来場した。

旅館の宴会場で開催された山響の温泉コンサート。演奏を体全体で感じられる距離感も好評だった=2013年7月30日、鶴岡市湯野浜
旅館の宴会場で開催された山響の温泉コンサート。演奏を体全体で感じられる距離感も好評だった=2013年7月30日、鶴岡市湯野浜
 この温泉コンサートは県が国の雇用創出基金を活用して実施。2カ年度で約5200万円を確保して山響に事業委託した。観光誘客を図ると同時に、気軽に演奏を楽しめる場を設けて山響ファン拡大につなげる狙いだ。誘客の観点でみると、開催地ごとに効果は一律ではないようだ。会場の広さ、時期の違いはあるものの、6カ所のうち、2日連続で開かれた5カ所で比べると、来場者は計150~750人と幅がある。

 ■幾重の魅力重ね
 最も多く集客したのは、13年2月に開催したかみのやま温泉。13年の開湯555年を記念し、演奏会と組み合わせた格安宿泊プランを企画したことが一因だ。1泊2日で1人5500円~1万5500円という特別料金。価格帯ごとに、当日抽選で宿泊旅館を決めるという遊び心も受けた。

 さらに宿泊者には、コンサート会場となった市体育文化センターの特等席を用意。視覚でも楽しめるよう、地域の名所や四季の風景をスクリーンに映し出す演出を加えた。いずれも地元の観光関係者が仕掛け、幾重にも魅力を重ねたことが客足に結び付いた形だ。「山響の演奏は誘客に生かせる。また企画してほしい」と二戸昭三上山市観光物産協会事務局長(68)。

 湯野浜温泉は、定員約200人の会場が2日間ともほぼ満席だったという。会場は旅館の宴会場で、くつろげる環境も好評を得た。

 ■費用連携で解消
 県の温泉コンサート事業は13年度で終了した。来場者の反応は「温泉に加えて山響の演奏を聴けるとは幸運」「オーケストラの生演奏に感動」と総じて良く、“売り”になり得ることが分かる。湯野浜温泉観光協会の担当者は「山響の年間スケジュールに温泉地での演奏会を組み込めれば、目当てに宿泊する人が増えるのでは」と提案する。

 県などによる山響の無料演奏会は13、14年度と商店街などでの「街なか音楽会」として開催されている。こうした機会や定期演奏会を温泉への宿泊とセットにして商品化する手もある。観光地や宿泊施設が単独で開催しようとするとネックになるのが費用面だが、観光関係者からは「自治体の文化事業で演奏会を開き、観光地・施設と連携して誘客してはどうか」「アンサンブルなど少人数でも人を呼べる」との声が聞かれる。音楽による誘客の可能性は広がる。
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