やまがた観光復興元年

第8部・DC検証[6] 地域資源の活用(下)

2014年09月24日
日本一の山車パレード・新庄まつり。今年の宵まつりには過去最高の22万人が訪れた=8月24日、新庄市
日本一の山車パレード・新庄まつり。今年の宵まつりには過去最高の22万人が訪れた=8月24日、新庄市
 日本一の山車(やたい)行列と称される新庄まつり(8月24~26日)。歌舞伎の名場面などを再現した豪華絢爛(けんらん)な山車とにぎやかな囃子が沿道の人々を魅了する。山形デスティネーションキャンペーン(DC、6~9月)による情報発信力の強化を追い風に、人気の宵まつり(24日)には今年、22万人が訪れた。昨年より5%伸び、過去最高の数字だ。千席増やして3400席を用意した有料観覧席は完売。3日間で52万5千人が訪れた。県内の祭りでは、山形花笠まつり(山形市)に次ぐ人出だ。

 新庄まつりの客足は増加傾向にある。開催日が固定されているため曜日に影響されるものの、1990年に37万人だった観光客数は、250年祭で1日延長した05年には54万人を記録。以降45万人前後で推移し、12年からは50万人を超える。

 しかし、新庄・最上全体でも宿泊収容能力は最大約5千人。経済効果の大きい宿泊客の多くは「宮城県の鳴子温泉(宿泊収容能力は旅館だけで3千~4千人)など県外に流れている」と分析する観光関係者もいる。

 新幹線、車、飛行機と交通手段が多様な村山地域でみると、尾花沢市の銀山温泉や天童市の天童温泉などは宵まつり観覧ツアーの宿泊客が一定程度入っている。一方で東根市の温泉協同組合(宿泊収容能力約1350人)は「新庄まつりによる宿泊者の伸びは例年あまりない」とする。新庄までの距離は約40キロで新幹線・列車で30~40分、車でも1時間程度。約50キロの鳴子温泉より近い。

 東根以外にも見物客の受け入れ先になり得る宿泊地は県内に多数ある。県内旅館の客室稼働率は13年で30.4%(観光庁)。全国31位にとどまる。今年はDC期間中のまつり開催となったが、新庄・最上以外の県内地域が組織的に宿泊客を取り込もうとする動きは見られなかった。

 新庄まつりの人出が伸びた背景には、市と新庄観光協会、新庄商工会議所、まつり関連団体で組織する新庄まつり委員会を主体とした地道な活動がある。1991年に東京・隅田川まつりと大阪・御堂筋パレードに山車(やたい)と囃子が参加したのを皮切りに、大都市圏の催しでのPRを開始。2009年の国重要無形民俗文化財指定も弾みになった。

市民らが躍動感ある踊りを披露するむらやま徳内まつり。各地域に根付く祭りは、県内全域で生かせる観光素材だ=村山市
市民らが躍動感ある踊りを披露するむらやま徳内まつり。各地域に根付く祭りは、県内全域で生かせる観光素材だ=村山市
 知名度を上げると同時に旅行会社、メディアへの売り込みも継続してきた。旅行会社への営業時は、まずは肘折(大蔵村)など最上地域の各温泉地を部屋数、泉質と併せて紹介。天童や東根、庄内など県内のほか、鳴子(宮城県)、小安峡(秋田県)など隣県の宿泊地も案内する。宿泊場所があれば、より多くの観光客を呼べるからだ。

 ■関西からツアー
 また、全国的には山形市の山形花笠まつりほどの知名度がないため、有名で開催時期が近い秋田県の大曲花火大会(全国花火競技大会、8月の第4土曜)とともにアピール。花火大会と新庄まつりの観覧に金山町の街並み見学、戸沢村での最上川舟下りを加えたモデルコースを示すなど、具体的な提案も行ってきた。今年は山形デスティネーションキャンペーン(DC)の宣伝効果で、初めて関西からのツアーが組まれた。

 DC期間中の8月後半には大石田町の大石田まつり、村山市の徳内まつり、尾花沢市のおばなざわ花笠まつりも開催された。この三つのまつりと新庄まつりは2007年から独自に連携した活動を展開。仙台圏に売り込むため、8月に1週間程度、JR仙台駅西口の大型ビジョンで各まつりの映像を流している。

 ■周辺への誘導も
 新庄まつりを含む全国18府県32件の祭りは「山・鉾(ほこ)・屋台行事」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産候補に一括提案されている。登録が実現すれば本県初。観光客のさらなる増加が期待される。このまつりを本県全体の資源として生かすべく、検討する時ではないか。市や関係団体が「新庄まつり百年の大計」で目指すのは100万人の誘客だ。「新庄まつりで新庄市だけが潤えばいいとは思っていない。最上、周辺地域への誘客につなげたい」。新庄市観光交流室の田宮真人室長(53)は言う。

 複数の観光関係者は「各地から送迎バスを出せば新庄まつりの個人客も取り込める」「それぞれの宿泊施設がまつり見物に便利だと発信すれば集客につながる」と指摘する。今後、県内の高速道路整備が進めば時間は短くなり、他の地域に宿泊客を誘導しやすくなる。

 県内にはほかにも、全国に誇れる祭りが数多く存在する。DC後も情報発信力を維持し、集客力を高めるには複数の祭り、地域による連携が必要になる。
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