やまがた観光復興元年

第8部・DC検証[7] 鶴岡・加茂水族館

2014年09月25日
加茂水族館の円形大水槽「クラゲドリームシアター」。山形DC期間中、連日来場者でにぎわった=13日、鶴岡市
加茂水族館の円形大水槽「クラゲドリームシアター」。山形DC期間中、連日来場者でにぎわった=13日、鶴岡市
 開館直後の午前9時。400台分の周辺駐車場はすでに埋まり、館内は全国から詰め掛けた「クラゲファン」であふれていた。クラゲの展示種類数で世界一を誇る鶴岡市立加茂水族館。「すごく癒やされた。一日中座って眺めたくなる」。東京から友人と訪れた女性は、その魅力に浸っていた。

 山形デスティネーションキャンペーン(DC、6月14日~9月13日)開幕後、旅行会社による大型ツアーが組まれ、加茂水族館には毎日のように団体客が訪れた。6月1日のリニューアルオープンの約2週間後に始まったDC期間中の来場者数は38万5326人。2012年度に記録した年間最多の27万1210人を大きく上回った。国宝五重塔のライトアップなどで注目を集めた羽黒山と並び、庄内地方の観光の中核を担った。「魅力的であれば全国から人が集まる時代だ」。村上龍男館長(74)は人の波を前に「魅力」の重要性を実感していた。

 “クラゲブーム”を受け、庄内地方の観光関係者にとって、いかに加茂水族館目当ての観光客を取り込むかが課題となった。「酒田は通過点になっている」。酒田市の関係者からは懸念の声も上がる。同水族館を中心に庄内を巡るツアーの一環で酒田を訪れる県外客は増えた。だが、多くが土産を買うために物産館などに立ち寄るだけで、滞在時間は短い。「酒田の魅力をあらためて掘り起こし、宿泊型の誘客戦略を練る必要がある」。酒田観光物産協会の後藤登喜男専務理事(64)は一歩踏み込んだ取り組みの必要性を強調した。

 鶴岡市立加茂水族館の北約3キロに位置する湯野浜温泉。同温泉観光協会は、加盟旅館の宿泊客限定で、温泉、水族館、市街地を結ぶ観光周遊バス(2日間で千円)の無料チケットを提供するサービスを水族館のリニューアルに合わせて始めた。

 ■「食」売り込む
山形DC閉幕後も県内外からの観光客でにぎわう加茂水族館。周辺の観光地には連携と魅力づくりが求められる=21日、鶴岡市
山形DC閉幕後も県内外からの観光客でにぎわう加茂水族館。周辺の観光地には連携と魅力づくりが求められる=21日、鶴岡市
 同温泉のホテル「愉海亭みやじま」では山形デスティネーションキャンペーン(DC)期間中、中部や四国といった西日本から足を運ぶ客が増えた。独自に水族館までの無料送迎サービスも実施。渡会智社長(56)は「クラゲを通じて湯野浜の魅力を知ってもらうことで新規の客を取り込むことができた」と手応えを感じている。9月以降も客の入りは好調で、例年を上回るペースだという。

 地元の「食」を売り込む動きも広がっている。休日の水族館前。三つ並んだテントの中に旬の農産物や果物などが並ぶ。県庄内総合支庁が地元住民らと連携して展開中の物産PRだ。今の時期は刈屋ナシやブドウ、県産米「つや姫」の団子、ホタテ焼きなどを販売しており、1日の平均売り上げは10万円に上る。

 クラゲに模した玉こんにゃくを開発したのは、食品製造会社の「まるい食品」(同市)。「水族館に来た客に喜んでもらえるものを作りたかった」と伊藤久美社長(56)は笑う。土日を中心に水族館内のフードコートで販売しており、お盆の時期には1日1500本以上を売り上げた。「水族館の人気に頼るばかりではだめ。互いに連携し、盛り上げていきたい」。伊藤社長が目指すのは「ウィンウィン」の関係だ。

 ■楽観視はせず
 一見、波及効果が随所に現れているように見える。しかし、鶴岡公園周辺の観光施設では、加茂水族館のチケットを持参すると入場料を割り引くサービスをしているが、今夏は雨の日が多かった影響もあり、集客に苦戦したという。同市観光物産課の永寿祥司課長(48)は各観光施設の連携を強化する必要性を強調する。「個別に知名度を上げても限界がある。結び付きを強めないといけない」。

 DC閉幕後も好調を維持する加茂水族館だが、先行きを楽観視する庄内の観光関係者は少ない。来春には福島DCが始まるほか、仙台市に「仙台水族館」(仮称)がオープン予定だ。黙っていても人が訪れる時期は過ぎつつある。永寿課長は気を引き締める。「DCで高まった関心をどう生かすか。これからが本当のスタート」。今こそ、他地域に負けない連携と魅力づくりが求められている。
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