やまがた観光復興元年

第8部・DC検証[8] 「とれいゆ」生かせたか

2014年09月26日
先頭部に最上川の趣あるブルーを配した足湯付き新幹線「とれいゆ」。観光誘客の足掛かりにするため、事前のPRが欠かせない=7月19日、新庄市・JR新庄駅
先頭部に最上川の趣あるブルーを配した足湯付き新幹線「とれいゆ」。観光誘客の足掛かりにするため、事前のPRが欠かせない=7月19日、新庄市・JR新庄駅
 コンセプトは「乗ること自体が目的となる列車」―。山形デスティネーションキャンペーン(DC)中盤の起爆剤として、全国初の足湯付き新幹線「とれいゆ」が7月19日、華々しくデビューした。畳座席に座ってゆったりとした時間を過ごす。高速化を追求する新幹線の潮流に逆行する列車だ。「温泉王国」を象徴するリゾート新幹線は鉄道ファンだけでなく、全国の観光客の注目を集めた。

 とれいゆは山形新幹線「つばさ」の臨時列車として、福島―新庄間を土日・祝日に1日1往復する。つばさより1両少ない6両編成で定員143人だ。足湯のほかに「お座敷指定席」が3両、山形の地酒が味わえるバーカウンター付きの「湯上がりラウンジ」車両もある。毎年、年120日程度の運行が予定されている。

 団体向けの貸し切り列車として、県内発のツアーも実施された。米沢観光物産協会は8月25日、新庄まつりに合わせて新庄市訪問を企画。定員120人は募集開始から2週間でいっぱいに。担当者が「話題の列車に乗れるということで、予想以上に好評だった」と驚く人気ぶりだった。

 一方で「乗ることが目的」のため、沿線の観光関係者は当初から「観光誘客には結び付かないのでは」と懸念していた。それを裏付けるような乗客の声も。新庄駅に降りた名古屋市南区の重田洋明さん(28)と浜松市中区の北本誉至雄(よしお)さん(29)は「最上地域の名所がよく分からない。食や観光の目玉もなさそうだったから」と話し、駅前でラーメンを食べ、折り返しの便でとんぼ返りした。とれいゆに乗る観光客が増えても地域に誘導できなければ意味はない。事前のPR不足という課題が見えた。

「とれいゆ」の乗客を歓迎するため、各駅や沿線で多彩なもてなしが行われた。通過に合わせ風船を飛ばして手を振る上山市民ら=7月19日、上山市体育文化センターグラウンド
「とれいゆ」の乗客を歓迎するため、各駅や沿線で多彩なもてなしが行われた。通過に合わせ風船を飛ばして手を振る上山市民ら=7月19日、上山市体育文化センターグラウンド
 「新庄・最上地域は新庄駅が終着駅というアドバンテージがあり、ある程度の誘客はできた」。全国初の足湯付きリゾート新幹線「とれいゆ」の効果について、県最上総合支庁の佐藤諭観光振興室長(55)は、こう分析した。

 ■個人客増に注力
 誘客作戦を展開するに当たり、佐藤室長は「広く浅く宣伝するよりは、ある程度、ターゲットを絞った」と語る。リピーターとなり得る個人客を増やすことに注力。メディア露出を増やそうと、新聞やテレビに積極的に売り込んだ。登山愛好家を誘導するため、専門誌に緑豊かな最上地域の特集掲載を依頼、実現した。

 ただ、とれいゆで新庄駅に着いた乗客が復路もとれいゆを利用する場合、新庄滞在時間はわずか2時間半。最上地域は「ブナと巨木のもがみ回廊」を合言葉に巨木や豊かな森林資源を観光面に生かそうと取り組んでいるが、広範囲に点在する巨木を短時間で観光するのは不可能だ。復路は他の交通手段を使う場合でも、宿泊を伴ったプランを提案する必要がある。佐藤室長は「最上地域は他の地域より観光名所が少ない。今ある素材を組み合わせ、旅行商品として定番化したい。もっと自助努力が必要だ」と課題を口にした。

 ■好評の“PR隊”
 とれいゆは毎回、100人以上の乗客を県内に運んでくる。県内各市町村は交代で車内に“PR隊”を乗り込ませ、それぞれの観光名所や祭り、魅力を乗客にアピール。地元の踊りや歌を披露し、名産品、観光パンフレットを配布した。

 庄内観光コンベンションは鶴岡天神祭の「化け物」や酒田獅子舞を披露。真室川音頭保存会は伝統の真室川音頭を踊り、町をPRした。源義経伝説が残る最上町は地元住民が義経や弁慶に扮(ふん)し、乗客を喜ばせた。

 いずれも乗客の反応は上々で「今度、ぜひ行ってみたい」と声を掛けてくる人もいたという。各市町村の担当者に共通するのは「いかにしてまた山形に足を運んでもらうかが一番大事」という認識だ。とれいゆはあくまで足掛かり。山形まで足を運んでもらう新たな目玉はできた。今後はどう誘客につなげ、それを各地域で生かすかが問われる。

 東京から来たという乗客の男性は「大変なもてなしで感動した。今度はゆっくり山形を観光したい」と語った。こうした人がリピーターとなり、さらにリピーターを呼ぶ。とれいゆはまだ走り始めたばかりだ。
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