やまがた観光復興元年

第8部・DC検証[10] 会津に学ぶ 広域連携で選択肢増

2014年09月30日
幕末の歴史の舞台となった鶴ケ城。会津はDC終了後も客足を伸ばしたとして注目を集める地域だ=福島県会津若松市
幕末の歴史の舞台となった鶴ケ城。会津はDC終了後も客足を伸ばしたとして注目を集める地域だ=福島県会津若松市
 戊辰(ぼしん)戦争、白虎隊の悲劇―。幕末の歴史から高い知名度を誇る福島県会津地域。9月のある休日、中心観光地の一つ・会津若松市の鶴ケ城やレトロな街並みで人気の七日町通りは、若者、家族連れ、シニアと幅広い年齢層の観光客でにぎわっていた。2011年の東京電力福島第1原発事故の風評被害を忘れさせる活気があった。

 今年6月14日~9月13日、本県で開催されたデスティネーションキャンペーン(DC)。JRグループと地元行政、観光関係団体が連携して宣伝・販売を行う国内最大規模の誘客事業だ。DCの年は客足を伸ばしても、終了後に観光客を減らす地域が多い。本県も前回DCのあった04年度に過去最高の4227万人を記録した後、4年連続で落ち込んだ。

 しかし会津地域は、DC後も観光客を増やした。統計の取り方は山形県と異なるが、会津若松市の観光客数で見ると、7~9月に「あいづDC」があった05年は315万人。06年330万人、07年349万人と前年比5~6%ずつ伸ばし、09年まで同水準を維持した。震災後激減したものの、13年はNHK大河ドラマ「八重の桜」の効果を味方に、396万人に達した。

 要因の一つが、DCを機に会津地域17市町村で観光面の広域連携を始めたことだ。「極上の会津」をキャッチコピーに掲げ、地域内の素材を一体的にPRし始めた。全国的に広域連携があまり盛んではなかった時代。協力し合うことで、かやぶき屋根の建物が並ぶ大内宿(下郷町)や喜多方ラーメン、ブナに代表される只見町の豊かな自然、磐梯山、猪苗代湖など多様な魅力がそろった。地元の関係者が強調した。「選択肢が増え、幅広い客層に選ばれるようになった」

明治~昭和初期の建物を修復し、レトロな街並みの七日町通り。幕末の歴史以外の新たな魅力で幅広い年代を呼び込む=福島県会津若松市
明治~昭和初期の建物を修復し、レトロな街並みの七日町通り。幕末の歴史以外の新たな魅力で幅広い年代を呼び込む=福島県会津若松市
 2005年7~9月に「あいづデスティネーションキャンペーン(DC)」を実施した福島県会津地域。DC後も客足を伸ばしたもう一つの要因は、主役だった幕末の要素をあえて前面に出さず、知名度の低かった素材に光を当てたことだ。例えば仏像。勝常寺(湯川村)には東北に2件しかない国宝の仏像のうちの1件「木造薬師如来および両脇侍像」がある。「仏都会津」を掲げ、エリア内の仏像を神社仏閣と合わせて紹介した。

 喜多方市にある新宮熊野神社。秋には樹齢800年の大イチョウの落葉が周囲を黄金色に染める。その光景がポスターで紹介されると、05年度の参拝者は前年の1.8倍に急増。その後も伸び、13年度は4万人に迫った。鶴ケ城や白虎隊は、会津と聞いただけでイメージしてもらえる。その周辺にあった素材を発掘し、磨き、発信したことで観光資源に厚みが増した。

■プラスの循環
 会津若松観光ビューローの渋川恵男理事長(67)がまちづくりを進めた会津若松市の七日町も、訪問者が右肩上がりの場所の一つだ。十数年前まで7割が空き店舗だったというシャッター通りは、戊辰(ぼしん)戦争後に人々が復興した大正ロマン調の街並みへと修復された。「ゼロ」(渋川理事長)だったという観光客は、1996年に米穀店を改装した茶屋がオープンして以降、年々増加。13年には30万人を記録し、街並みの再整備も現在進行形だ。

 「観光客が入ると物が売れ、地域が活性化することに市民が気付き、活動の賛同者が増えていった」と渋川理事長は振り返る。自治体が観光事業に力を入れるようになったこともあり、「行政が何も示してくれない」と嘆く事業者もいる。しかし渋川理事長は観光は民間主導でやるべきと強調する。「観光客はその土地らしさを求めてくる。行政主導では画一的になりがち。民間が自分たちの地域をつくり、それを行政が支援すれば、異なるらしさを持つ地域がそこかしこにできる」と続けた。

■合同で情報発信
 DCから10年近くが経過した今も、会津の観光資源は地域内の17市町村が連携して情報発信している。極上の会津プロジェクト協議会としてパンフレットやホームページを作成し、旅行会社への売り込みも実施。2013年度は各市町村と県の負担金に国の助成金を加え、約7300万円を確保。メーンのパンフレットだけで31万5千部を発行し、主に首都圏で配布した。

 「地域の光る素材を外にPRし、来てくれた人をしっかりと迎えてリピーターになってもらう。観光振興はこれを繰り返すことに尽きる」。同協議会事務局を務める会津若松市観光課の長谷川健二郎課長(52)は言う。継続の重要性が見えてきた。

 来年4~6月には会津を含む福島県全域を対象にしたDCが行われる。山形DCが終了した今、福島に入る観光客を本県まで誘導する取り組みが、すぐにも求められている。
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