やまがた観光復興元年

第9部・農と食と[1] グリーンツーリズム(上)

2014年10月17日
秘伝豆の収穫体験。おいしい枝豆を求めて、多くの市民らが参加した=9月28日、山形市
秘伝豆の収穫体験。おいしい枝豆を求めて、多くの市民らが参加した=9月28日、山形市
 今年2月、山形市村木沢地区に、啓翁桜の栽培の様子を見学する団体客がいた。宮城県内の旅行会社が企画したツアーで、村木沢あじさい営農組合(山形市)が受け入れた。定員30人に対し100人が応募する人気ぶり。一行は日本一の啓翁桜の産地の本県で、一足早い“春”を体感した。

 同組合は県内最大規模の農事組合法人(組合員約250人)だ。2001年に任意団体を立ち上げて以降、組織で後継者を育て、地域の農業を守る活動を展開。これを主軸にしながら収穫体験の機会を設けてきた。畑での作業や新鮮な作物を食べることを通じ、消費者と生産者との距離を縮めたいとの思いからだ。

 9月下旬には8年目になる秘伝豆のもぎ取り体験を開催。4~5キロ入る袋(500円)に詰め放題とあって800~千人が参加した。家庭菜園で野菜を育てているという同市前明石の男性(60)は「プロが育てたものは味が違う」と汗を流した。毎年一番乗りで行列の先頭に並ぶという同市南松原の加藤昌孝さん(73)。「東京にいる娘が楽しみにしてるんだ」と顔をほころばせた。

 同組合がこれまで企画した収穫体験、見学の参加者の多くが市内を中心とする地元住民。2月の啓翁桜見学ツアーは、ほとんど来たことがなかった県外からの団体客だった。組合にとって観光誘客の手応えを感じる機会となった。秘伝豆も誘客の素材になり得る。

 「商・工と連携する6次産業化を模索してきたが、今後は農観連携にも取り組んでみたい。農業への理解を深めてもらいたいのが一番の目的ながら、土産品の購入も期待できる」。同組合の開沼雅義組合長(68)は力を込めた。

 農山漁村で豊かな自然や暮らしを体験するグリーンツーリズムによる交流人口が増えている。県のまとめ(参考値)によると、2013年度は産直施設や農家民宿、農家レストランなどの利用者を合わせた数は883万人。10年前の1.8倍に伸びた。農業などが生み出す食も、吸引力の強い観光資源として注目されている。山形新聞、山形放送の8大事業「やまがた観光復興元年」第9部は、本県の農と食を生かした観光振興の道を探る。

珍しい本ワサビの収穫が体験できる大富農産。漬物として楽しめる葉ワサビも持ち帰り可能だ=東根市
珍しい本ワサビの収穫が体験できる大富農産。漬物として楽しめる葉ワサビも持ち帰り可能だ=東根市
 珍しい収穫体験ができる場所が東根市大富地区にある。大富農産(東根市)による本ワサビの収穫だ。環境省名水百選に選定された清流小見川(おみがわ)の水源となる地下水で、約7万2千本を作付けする。体験の受け入れを始めたのは、大手旅行会社からの働き掛けに応じた約5年前から。大富農産で収穫した「マイワサビ」を持ち、周辺の村山市、尾花沢市、大石田町にある「そば街道」でそばを楽しむという企画だった。

 ■価値を伝えたい
 各そば街道の代表者に協力を依頼し、受け入れ態勢を整えた。しかし申し込みは伸びず、最近はその企画ではない通常の収穫体験の客が年間30人前後いる程度だ。「面白い企画だと思ったが…。自社や旅行会社のホームページで紹介していただけなので、あまり知られなかったのかな」。桜井清晴社長(63)は振り返る。

 参加者が少なくても収穫体験の受け入れを続けるのは、ワサビがどのように育っているのか、見てほしいからだ。体験料金は1人1300円。葉ワサビも持ち帰ることができる。価格以上の品を提供しようと、体験者を案内するのは根ワサビの部分が50~70グラムに成長した畑。この大きさまで成長するには1年半かかる。その時間を含め、作物の価値を伝えたいと思っている。

 ■加工品の購入も
 同社の売り上げの柱は市場への出荷と飲食店などへの直接販売。顧客は料亭をはじめ、食材にこだわる所が多い。そうした店が限られる中、加工品の購入も期待できる観光客、収穫体験参加者を今後増やしたいと考える。

 桜井社長は、本ワサビの希少価値と、一年中見学・収穫できる点を強みと捉えている。だが、どう売り込んでいいのか分からずにいる。市観光物産協会で問い合わせ時に紹介してもらっているものの、加工品を販売する直売所にチラシを置けばいいのか、広告を出すべきなのか、それがどの程度の効果を生むのか、見えないという。

 県内最大規模の農事組合法人である村木沢あじさい営農組合(山形市)も、観光農業を始めようとすると同様の課題にぶつかる。秘伝豆の収穫体験では市民を中心に千人近くを集める実績がある。約250人いる組合員を生かし、対応日数、作物を一定程度、確保することも可能だ。しかし、意欲はあっても、単独では観光客の受け入れ態勢の整備や情報発信の点で課題が残る。

 それらの解決のヒントは、サクランボ狩り観光客数が県内一の寒河江市にあった。
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