やまがた観光復興元年

第9部・農と食と[2] グリーンツーリズム(中)

2014年10月18日
本県のグリーンツーリズムの代表格・サクランボ狩り。寒河江は窓口を一元化した組織を設け、団体客を呼び込んでいる=6月1日、寒河江市
本県のグリーンツーリズムの代表格・サクランボ狩り。寒河江は窓口を一元化した組織を設け、団体客を呼び込んでいる=6月1日、寒河江市
 昨年10月から今年2月にかけ、首都圏や関西圏の大手旅行エージェントを丹念に回る一行があった。寒河江市周年観光農業推進協議会事務局のJAさがえ西村山や、市、寒河江温泉協同組合などの担当者らだ。人と資金を出し合い、大阪、北関東と方面ごとに分かれて営業。延べ40日間にわたり、2度、3度と同じ会社に顔を出し、サクランボを中心とした多彩な果物狩りと慈恩寺などの地域資源を売り込んだ。

 同協議会は、旅行会社への売り込みや価格交渉、全国への情報発信、イベントの企画・実施を担い、団体・個人客の受け入れ、問い合わせ・苦情への対応など、果物狩りに関する全てを一元化した窓口となっている。この組織を核に、寒河江は団体の取り込みを得意とする。

 今年6、7月は、関越自動車道の高速ツアーバス事故を受けて運転手1人当たりの走行距離・時間が制限されて以降、最初のサクランボシーズンだった。首都圏発着の日帰りバスが激減したとされたが、寒河江のサクランボ観光果樹園は団体客を前年比で1割伸ばした。組織的営業で旅行会社を2社、新規開拓したからだ。

 その結果、今季の観光果樹園全体の入り込み数は前年より4.7%減らしたものの19万2400人を数え、県内トップの座を守った。旅行形態の個人化が進み、今季18万3千人の入り込みで寒河江に続く東根市のほとんどが個人客なのに対し、寒河江は団体が全体の半分と高い割合を維持する。

 加盟する観光果樹園はサクランボだけで300カ所。同協議会は生育状況や各園の予約情報を集約しているため、当日に大口の飛び込みがあった場合も即座に振り分け、対応する。「佐藤錦が早く食べごろになるのはあの地域、車いすのお客さまならこの園と、要望に応じて案内できる」。同協議会事務局があるJAさがえ西村山観光農業課の伊藤芳明課長(52)は胸を張った。

 果物狩りに関し、一元的な窓口を担う寒河江市周年観光農業推進協議会は30年の歴史がある。市内では昭和40年代に3農家がサクランボ狩りを始めたことから観光農業がスタート。年々手掛ける農家が増え、観光客の拡大策、ニーズへの即時対応など多様な課題に直面したという。

家族連れらに人気のイチゴ狩り。春休みなどは断らざるを得ないほど予約が寄せられるという=1月24日、寒河江市
家族連れらに人気のイチゴ狩り。春休みなどは断らざるを得ないほど予約が寄せられるという=1月24日、寒河江市
 ■協議会立ち上げ
 当時、観光面の窓口は市、JA、各生産組合などに分かれ、対応もバラバラだった。「観光農業の発展を目指すには窓口の一元化が不可欠」と関係機関が協議を重ね、1984(昭和59)年、JAに観光農業課を新設。同課を事務局として協議会を立ち上げた。

 サクランボに続きモモ、ラ・フランスなどの各観光果樹園も加わっていく。今では1月の雪中イチゴに始まり、11月のリンゴまで、ほぼ通年で果物狩りができる地盤が整った。協議会には市や観光物産協会、商工会のほか、民踊サークルやシルバー人材センター、JR東日本、寒河江温泉協同組合、飲食店組合、タクシー会社などが協力機関、情報連絡会員などとして参加。地域を挙げた組織は「全国で寒河江だけ」(関係者)といわれる。幅広い情報の共有が各組織の意思統一と強い協力態勢につながっている。

 ■客のニーズ捉え
 多様なプランの提案も強みだ。例えば団体向けの「超VIPさくらんぼ狩り」。一般的な露地物のサクランボ狩り(1人1200円)の2倍近い2300円の料金ながら、糖度18度以上の高品質のサクランボを提供する。「せっかく本場の山形県に行くなら最高級のものを食べたい」という消費者ニーズを捉えた。募集すれば定員がほぼ埋まる人気だという。同じ協力態勢の中で、バラ風呂や芋煮体験なども受け入れる。

 窓口を一元化したことで情報発信力、交渉力が高まり、大手旅行会社による「買いたたき」も避けられるようになった。苦情があった場合、直接協議会に連絡が入る点もプラスの循環を生む。対応が改善されない園は、観光客を紹介してもらえなくなるため、観光果樹園全体のレベル向上につながる。「情報を集約しているからこそ、安心してお客さまに果樹園を紹介できる。品質の高いサクランボ狩りの提供が、お客さまに選んでいただける理由ではないか」。寒河江温泉協同組合の事務局は分析した。

 寒河江の例は、多様な農作物を観光に生かすヒントになり得る。
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