やまがた観光復興元年

第9部・農と食と[5] 庄内の挑戦(下)

2014年10月22日
取れたての紅エビ販売には多くの人が列をつくった=9月5日、鶴岡市鼠ケ関
取れたての紅エビ販売には多くの人が列をつくった=9月5日、鶴岡市鼠ケ関
 底引き網漁が再開した鶴岡市の鼠ケ関港。日差しが和らぎ始めた卸売市場前に長い列ができた。お目当ては旬を迎えた紅エビ。客が差し出す千円札に、売り手側のパック詰めが間に合わない。手ぶらの客を残し30分ほどで売り切れた。

 水揚げされたばかりの地魚を浜売りする「とれたて! お魚夕市」。鼠ケ関をはじめ庄内の港は夕方の競りが定番といい、店やスーパーに並ぶのは早くても翌朝。「さっきまで泳いでいた魚介をゲットできる」(同市温海庁舎)新鮮さが魅力で、内陸地方はもちろん新潟や仙台から客が押し寄せる。みそ汁に丼、串焼きと9月5日に行われたエビずくめの祭りは日没近くまで続いた。

 主催するのは、自治会や漁業者団体が中心になった町づくりチーム「蓬莱(ほうらい)塾」。年2~3回開く地元を挙げた食のイベントで、去年から9月は紅エビ、10月は漁解禁されるカニを前面に出すようになった。

 蓬莱塾は7年前に発足した。日本海東北自動車道の開通も追い風に「夕市や漁船クルージングは定着し、客も年々増えている」と佐藤真紀子会長(72)。目下の狙いは修学旅行の誘致と観光ガイドの養成という。県内屈指の水揚げ量を武器にした漁師町の挑戦。しかし、道のりは平たんではなかった。

 「10年先が見えない」。鶴岡市鼠ケ関を元気づけようと蓬莱(ほうらい)塾が発足したのは2007年。魚食離れ、漁獲量の激減、燃料費の高騰…と難題が次々押し寄せていた。

 自治会や漁業4団体が中心になり翌年、国の「農山漁村地域力発掘支援モデル事業」の指定を受けて活動をスタート。「日本海の鮮魚」「源義経伝説の残る歴史」を2本柱に据えた。

■「選択と集中」
 しかし、09年に政権交代。民主政権下の「事業仕分け」で支援廃止が決まり、早々と熱意に水を差される形となった。それでも「いずれは一本立ちしていこうとの目標で始めた」と五十嵐一彦事務局長(57)。予算額は減るものの、別の補助メニューに切り替え事業内容の選択と集中を図った。

 庄内の各港は夕方に競りを行う。大消費地の朝競りに鮮度の高い魚を届ける狙いがある。夕競りは地元では当たり前だが、全国的には珍しい。「新鮮を売り込む」という地元の心意気をイベントでも示そう。4年目を迎えた「お魚夕市」はこんな発想から生まれた。

今年のカニまつりは競りが休みの土曜昼に開催。しけでカニは不足気味だったが、多くの人でにぎわった=10月11日、鶴岡市鼠ケ関
今年のカニまつりは競りが休みの土曜昼に開催。しけでカニは不足気味だったが、多くの人でにぎわった=10月11日、鶴岡市鼠ケ関
 競りの開始は午後5時半。値が付いてから販売を始めたのでは暗くなってしまう。当日だけは一部の漁船の入港や競りを早め、荷揚げや競り風景が見学できるようにと漁協サイドも腰を上げた。「卸値がばれちゃうと仲買の魚屋さんからは嫌がられるけど、まちづくりに協力しないとね」と県漁協念珠関総括支所の佐藤修次長(54)。休漁中の底引き網漁船を使ったクルージングも夏らしいイベントとして定着した。

■食と漁業絡め
 7年間を振り返り、蓬莱塾の佐藤真紀子会長は「観光や商工、漁業などバラバラだった団体につながりができた」と話す。観光ガイドの不足など課題が山積みなのは承知の上だ。修学旅行の誘致に向け、自然体験の指導者養成を始めた。イカ一夜干しだけでなく、タコかご漁、海藻採り、ところてんづくり…と食と漁業に絡めたメニューには事欠かない。

 山形デスティネーションキャンペーン(6~9月)が終わった今、地元が見据えるのは16年度に迫った「全国豊かな海づくり大会」だ。鼠ケ関港は放流・海上歓迎行事の会場に決まっている。さらには日本海東北自動車道の全線開通。「経済効果は計り知れない。大きな起爆剤にしないと」と五十嵐事務局長。通過点になってしまう危機感も併せ持ちながら、漁師町は挑戦の道を歩み続ける。
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