やまがた観光復興元年

第9部・農と食と[6] ワインツーリズム(上)

2014年10月23日
初開催となった「やまがたワインバル」。県内外のワインを飲み比べできるとあって2000人超でにぎわった=7月6日、上山市
初開催となった「やまがたワインバル」。県内外のワインを飲み比べできるとあって2000人超でにぎわった=7月6日、上山市
 上山城に人の波が向かっていた。目的は県内7、県外3のワイナリーが参加する「やまがたワインバル」。会場のそこかしこで「乾杯!」の声が響く。仙台市の会社員鏡信幸さん(44)は「全ワイナリーを制覇したい」とグラスを掲げた。

 かみのやま温泉旅館組合(冨士重人組合長)が7月に開催し、初回ながら約2200人が来場。ワインまつりとして県内最大規模を達成した。ピザやパスタなどワインに合う料理を提供する出店も25店並び、周辺の飲食店もにぎわった。

 上山市は全国有数のワインの“産地”。地元メーカーは、全国的知名度の高いタケダワイナリーと、昨年9月に醸造を始めた蔵王ウッディファームの2社だが、アサヒビールとサントリーが同市産ブドウを使い、商品名に「かみのやま」を入れたワインを販売している。

 上山だけでなく本県全体にワイン産地は広がる。全12ワイナリーで醸造される製品は全国から高い評価を受ける。750超の銘柄の国産ワインが競う国内最大規模のコンクール「ジャパン・ワイン・コンペティション」では、2013年に朝日町ワイン(朝日町)の1銘柄と高畠ワイン(高畠町)の2銘柄が、今年は朝日町ワインの2銘柄とJA庄内たがわ月山ワイン山ぶどう研究所(鶴岡市)の1銘柄が金賞に輝いた。銀賞や銅賞、県産ブドウを使って県外で仕込んだ銘柄を合わせると、“県産”の受賞数はさらに増える。コンクールに出なくても仕入れ競争が起きる人気のメーカーもある。

 多くの県内メーカーなどがワインまつりを開くものの、各ワイナリーの製品を飲み比べできる機会は少ない。その場を提供した上山のワインバルは県内外から人を呼び込んだ。高品質の県産ワインは、観光資源としても注目を集める。

「全ワイナリーを制覇したい」と意気込む人も。やまがたワインバルでは、各ブースに愛好家らの列ができた=7月6日、上山市
「全ワイナリーを制覇したい」と意気込む人も。やまがたワインバルでは、各ブースに愛好家らの列ができた=7月6日、上山市
 農林水産省の特産果樹生産動態等調査(2011年度)によると、本県はワイン用ブドウの生産量が780トンで、長野県、山梨県、北海道に次ぐ全国4位。国内総生産量の8.0%を占める。一方、ホットペッパーグルメリサーチセンター(東京)の国産ワインに関する調査では、好きなワイン産地で本県を選んだのは2.2%で全国6位だった。産地として知名度が低いことがうかがえる。

需要増も生産減
 上山市もワインと醸造用ブドウの産地でありながら、住民にも十分認知されていなかった。そこから2千人超が集うワインバル開催まで機運を盛り上げるきっかけになったのが、山形銀行が提案した「かみのやま産ワイン活性化プロジェクト」。市内ワイナリーの製品と、県外メーカーが上山産ブドウで仕込む製品を「かみのやま産ワイン」と定義。観光資源としても活用することで地域振興につなげる計画だ。

 提案の背景には、ワインと醸造用ブドウの矛盾した関係がある。全国的評価の高い「かみのやま産ワイン」は売り切れるケースが多く、醸造用ブドウの需要も高まっている。一方で農家の高齢化や後継者不足から生産量は減少し、耕作放棄地も増えている。「この矛盾は、県内の多くのワイン産地が抱える問題だ」。プロジェクトを担当する同行山形成長戦略推進チームTRYの長谷川貴一推進部長代理(36)は指摘する。

市民も価値認識
 開拓が難しいとされる販路は既にある。醸造用ブドウは生食より安価だが、価格が安定している利点もある。生食は全国生産量や市場の変化で短期間に下落する品種もあるからだ。耕作放棄地を利用した規模拡大や新規参入支援で生産量を増やし、飲食、観光業とも連携して地域振興につなげられないか。何も生まなかった耕作放棄地から始まる経済活性化のストーリーに農家、ワイナリー、行政、観光関係者らが反応した。

 13年8月に最初の意見交換会を開催。情報を共有し議論した結果、まずは市民に「かみのやま産ワイン」の価値を伝えようと、同年11月にワインミーティングを開いた。各社のワインを味わってもらい、ブドウ農家やワイナリー代表によるパネルディスカッションで現場の声を聞いた。「この催しで『ワインは上山の宝』との認識が広まった」と関係者は言う。

 今年3月には、かみのやま産ワインによる乾杯を推進する条例が施行。すし店など地元産ワインを置く飲食店も市内に増えた。醸造用ブドウ生産への新規参入を目指し、耕作放棄地を探す製造業の事業所も現れた。これらがプロジェクト始動からおよそ1年後のワインバル開催(7月)へとつながっていく。
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