やまがた観光復興元年

第9部・農と食と[7] ワインツーリズム(下)

2014年10月25日
高品質のブドウで仕込まれるワインへの評価の高まりは生産農家の励みになっている=上山市
高品質のブドウで仕込まれるワインへの評価の高まりは生産農家の励みになっている=上山市
 上山市のブドウ畑は日当たりの良い斜面に広がる。水はけが良く、秋の寒暖差の大きさから良質なブドウが収穫できる適地だ。市内のワイン用ブドウ農家で組織する南果連協同組合ワイン部の木村正男部長(62)は、祖父の代からブドウ生産を手掛ける。県内外10ワイナリーが参加して市内で初開催された「やまがたワインバル」(7月6日開催)を訪れ、2千人超のにぎわいに胸が躍った。

 ワイン部のメンバーは30人。メルローやシャルドネなど赤白合わせて年間250~270トンのワイン用ブドウを出荷する。仲間たちは皆、いいブドウを作るために汗を流してきた。「先人からの地道な努力がようやく花開いたようで、本当にうれしかった」。木村部長は目を細めた。

 組合は昭和50年代後半からワイン専用品種の栽培を始めた。生食デラウエアから転向した農家が多い。適地という好条件に甘えることなく、研修を積み、ワイナリーと協議を重ね、栽培技術を高めてきた。

 その結果、2006年にアサヒビールが商品名に「かみのやま」を掲げたワインの販売を開始した。赤、白、スパークリングの計7銘柄を展開。中には商品名にブドウ農家の名字が加わる銘柄もある。サントリーも10年から「かみのやま」名入りの製品を販売。醸造場所はいずれも県外だが、紛れもない自分たちのワインだ。こうした流れは生産者の励みになった。

 ワインバルなどを通じて地元でも上山のワインの価値が認識されるようになった。「今まで以上にいいブドウを作らないとね」と木村部長。ワインと産地に対する評価は、生産者の意欲向上につながった。

朝日町ワインまつりのブドウ踏み競争。多くのファンを持つ各ワイナリーが連携すれば大きな集客力になる=9月23日、朝日町
朝日町ワインまつりのブドウ踏み競争。多くのファンを持つ各ワイナリーが連携すれば大きな集客力になる=9月23日、朝日町
 ワインツーリズムの人気は全国的に高まりつつある。県内では年間30万人近くが訪れる高畠ワイナリーや、南陽市内の4ワイナリーを巡るツアーなどが有名だ。各地でメーカーなどが主催してワインまつりを開いている。一方で上山市のワインバルは地元旅館組合の主催。観光業界側が仕掛けた点が新しい。

 ■県外客取り込む
 チケットの販売方法も工夫した。県外のコンビニでも購入可能な「チケットぴあ」を活用して約500枚を売り上げた。9割が仙台圏だ。地域イベントは地元でしかチケットを扱わないのが一般的。興味があっても購入が不便だと参加をためらう県外客もいる。この問題を解消した。

 上山の関係者は来年以降もワインバルを継続するつもりだ。既に山梨県内の複数社から参加の申し出がある。参加ワイナリーを増やし、開催期間も延ばして宿泊につなげたいとする。中心人物の一人、五十嵐伸一郎葉山館社長(42)は「素晴らしいブドウの生産者とワイナリーがあればこそ」と強調する。ブドウが作れなくなったらワインを生かした誘客自体できなくなる。「観光が生産を支えることを考えなければならない」と続けた。県内産地の地域間連携も進めたいと考えている。

 ■ホテルに「県産」
 葉山館は上山市湯町に所有する旧旅館「山城屋」に県産ワインをそろえた飲食店を開業する予定。県産ワインには山形市のホテルキャッスルも着目する。レストランで現在、県内12ワイナリーのうち11のワインを提供。来月には上山市の蔵王ウッディファームの商品も入荷する。全ワイナリーの製品を網羅したホテルは県内で他にないという。飲み比べができる場の存在は、宿泊する理由になり得る。

 ホテルキャッスルはこのほか、上山市内の2ワイナリーをタクシーで巡る宿泊プランの販売を準備している。購入したワインはホテル内レストランで味わえるようにする。試飲用にチーズやパンをワイナリーに持ち込めるオプションも用意する考えだ。

 ワイン用ブドウ生産量日本一の長野県は、県が旗振り役を務め「信州ワインバレー構想」を掲げる。昨年6月には行政、ワイン協会、生産・観光団体など幅広い組織が参加し、協議会を設立。10年後までにワイン関連の観光客を2割増やし、県民1人当たりのワイン購入量を約2倍に伸ばすなど、具体的な数値目標を掲げる。ライバルの産地は、既に全県組織での動きを始めている。「山形も全県で立ち向かわなければ地域間競争に勝てない」。本県関係者は言った。
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