やまがた観光復興元年

第9部・農と食と[10] 大消費地でのPR

2014年10月30日
本県の食材を高く評価し、提供する料理店は観光PRのパートナーとなる=5月、東京・丸の内、「日本料理 しち十二候」
本県の食材を高く評価し、提供する料理店は観光PRのパートナーとなる=5月、東京・丸の内、「日本料理 しち十二候」
 県産の自然薯(じねんじょ)と最上伝承野菜「畑ナス」のオーブン焼き、舟形マッシュルームを載せたトースト、月山筍(だけ)と庄内豚ベーコンのパスタ…。東京駅構内と周辺の約70の飲食店で、本県の食材を使った創作料理が提供された。5月30日から1カ月にわたって繰り広げられた「東京駅まるごとやまがたフェア」。駅利用者、買い物客らが山形の旬を味わった。

 県内に足を運ぶきっかけを多角的に創出するため、物産展やイベントと合わせて食の魅力をPRする事業。山形デスティネーションキャンペーン(6~9月)に合わせ、JRグループが主催した。

 参加店舗の一つ、東京ステーションホテル内の「日本料理 しち十二候」。旬の食材にこだわり、その時々に入る野菜、魚介類で季節感あふれる献立をつくる。5月30日のフェア初日は、コシアブラのエゴマあえや皮が軟らかなナス「蔵王サファイヤ」の田舎煮、「温海カブ」のすしなどが並んだ。

 県産食材について酒井桂一料理長(48)は「米、野菜、肉、魚と幅広くそろい、どれもおいしい」と高く評価。鶴岡市の「アル・ケッチァーノ」の奥田政行オーナーシェフらの活躍を挙げ、「知名度は首都圏でも高まっている」と続けた。

 県産食材は、山形にしかない伝承野菜などを含め、数量が少ないケースが多い。一般流通に乗せにくく、販路確保が難しいと指摘されていた。しかし、食材に徹底してこだわる酒井料理長は「必要な食材」と表現した。

 首都圏をはじめ県外の飲食店で県産食材が使用されれば山形のPRにつながる。四季折々に多彩な食材がそろう特長を発信する上で、旬を大切にする飲食店は最適なパートナーになる。

 ■生産者、販路開拓
 県産の農畜産物や魚介類を首都圏などの食材にこだわる飲食店に届ける際、重要な役割を果たすのが納入業者だ。東京の「日本料理 しち十二候」には、築地の青果店「角商(かくしょう)」が県産野菜を届ける。産地を訪ね、伝統野菜などの仕入れルートを独自に開拓し、優れた食材を求める飲食店を数多く顧客に持つ。

県商工会連合会などが主催し、本県の魅力的な食を紹介したフェア。大型ビジョンなどを使った観光PRも行った=9月、JR東京駅
県商工会連合会などが主催し、本県の魅力的な食を紹介したフェア。大型ビジョンなどを使った観光PRも行った=9月、JR東京駅
 こうした納入業者を見つけるためには、どうすればいいのか。県内産地に足を運んでいる角商の佐藤博信さん(45)は「生産者が直接販路を開拓することが必要」と答えた。多くの農家が頼るJAは「市場」へのパイプを持つ。しかし、その市場では、数量の少ない食材は需要がほとんどなく、“売れない”商品だという。一方、食材にこだわる飲食店は絶対数は少ないものの、大都市圏なら一定数存在する。そこに届けるには、生産者が直接飲食店や角商のような納入業者とつながることが必要だと言うのだ。「生産者の収入は異常に思えるほど少ない。それが変わるだろう」

 県は東京・銀座にある県アンテナショップ「おいしい山形プラザ」のパートナーショップとして、首都圏で山形の食を提供する約40店舗を登録。ホームページなどで紹介する。こうした店舗を増やすことも求められる。

 ■売り込むフェア
 本県の食を首都圏に発信する事業は、ほかにもある。県商工会連合会は、県産食品の販売と観光PRを合わせたフェアを1~2月と9月、東京駅で実施。JRグループなどと連携し、山手線の電車内の画面や都内主要駅の柱に設置されたデジタルビジョンを使ったCM放映など、大規模な広報活動も展開した。

 また、消費者ニーズを捉えた売れる食品づくりと販路拡大の場として、東京駅構内に「美味発信 やまがた家」を開設。12月までの半年間、漬物やそば、食肉加工品、酒、スイーツを販売する。県内全市町村の観光パンフレットをそろえ、情報発信基地の役割も果たす。

 食との出合いは山形に足を運ぶきっかけになり得る。さらに期待できるのが、旅行を機に本県の食のファンを増やす効果だ。やまがた家にも「現地で食べたふうき豆がおいしかった。取り扱いがないか」などと尋ねる客が足を運んでいる。本県への観光客が増えれば、県観光物産協会などが県外で開く物産展の売り上げアップに結び付く可能性がある。

 農業と食をどう誘客につなげるか、観光を生かしてどう農作物、魚介類の消費拡大につなげるか。本腰を入れて考える時期にきている。
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