やまがた観光復興元年

第10部・全国とどう戦うか[1] 激化する地域間競争

2014年12月20日
世界最大級の旅の祭典・ツーリズムEXPOジャパン。激しさを増す地域間競争の縮図のようだ=9月、東京ビッグサイト
世界最大級の旅の祭典・ツーリズムEXPOジャパン。激しさを増す地域間競争の縮図のようだ=9月、東京ビッグサイト
 東京・有明の東京ビッグサイトに47都道府県、世界151の国・地域の1100を超える団体・企業ブースが並んだ。9月末に開催された世界最大級の旅の祭典「ツーリズムEXPOジャパン」。約15万人の消費者、旅行エージェントらにそれぞれの地域、企業が情報を発信。各ブースで呼び込みや催しを行い、PR合戦を繰り広げた。その様子はさながら、激しさを増す地域間競争の縮図だった。

 今なぜ各地域が観光振興に取り組むのか。観光は人口減少で落ち込む消費を埋める経済効果が期待できる産業だからだ。観光庁の試算(2013年)によると、定住人口1人当たりの年間消費額は124万円。これは外国人旅行者10人、国内旅行者なら宿泊旅行者で26人、日帰りで83人の消費額に相当する。国が2003年にビジット・ジャパン事業を開始し、外国人旅行者の誘客に力を入れるのも、このためだ。

 観光は他業種への影響が大きい。本県で6~9月に展開された観光誘客事業デスティネーションキャンペーン(DC)の経済波及効果(山形DC推進協議会と山形銀行の共同調査)は推計125億円。宿泊業の28億円だけでなく飲食店に33億円、食料品を含む製造業に11億円、商業に10億円、農業に4億円と幅広い産業に及んだ。

    ◇   ◇

 地域活性化に直結する観光客の獲得で、全国と戦うにはどうすればいいのだろうか。山形新聞、山形放送の8大事業「やまがた観光復興元年」第10部は、本県が真の観光立県となるための課題を検証し、先進地の取り組みからそのヒントを考える。

ツーリズムEXPOジャパンに出展した山形市観光協会と県商工会議所連合会の合同ブース。やまがた舞子が注目を集めた=9月、東京ビッグサイト
ツーリズムEXPOジャパンに出展した山形市観光協会と県商工会議所連合会の合同ブース。やまがた舞子が注目を集めた=9月、東京ビッグサイト
 旅行会社や消費者に情報を届ける場の一つ・ツーリズムEXPOジャパン。最大出展者は沖縄県(50コマ)で、沖縄美ら海(ちゅらうみ)水族館を再現したような巨大水槽を配置した。ほかにもNHK連続テレビ小説「あまちゃん」を前面に出した岩手県(8コマ)など県単位で地域色あふれるブースが並んだ。

 ■居住地に情報
 本県は、山形市観光協会と県商工会議所連合会が共同出展(3コマ)し、県が東北観光推進機構とJR東日本の合同ブース(35コマ)に参加したのみ。東北エリアとしてのPRはできたが、本県単位の出展がなく山形色の発信が弱いように見えた。それは、この場に限ったことではないと複数の観光関係者が指摘する。

 例えば山形県民が旅行を考える時、どこに、いつ、どんな交通手段で行くかを決めるのは県内で、ではないか。旅行者の居住地に情報を届けなければ、選択肢にすら入ることができない。一方で行政や観光協会がつくる旅行パンフレットのほとんどが来てくれた人向け。県外客が旅行を検討する場面には多くが届かない。「発地をいかに制するかが観光誘客の鍵になる」。全国的な観光戦略に詳しい三重交通グループ観光販売システムズの小高直弘社長(52)は強調する。

 「発地」とは旅行者が出発する地点。多くの場合、居住地となる。小高社長は、その対策は本県からの距離や交通手段、情報収集の手段を分析し、ターゲットごとに考える必要があるとする。遠い地域では山形に一生に一度行くか行かないかという人が多いため、サクランボ狩りや樹氷観賞といった“王道”プランが求められる。一方、マイカーで何度も来県できるエリアには穴場巡りも受ける。飛行機で来る地域なら航空会社との連携も重要という。

 「最初に旅行会社を活用すべきだ」と小高社長。どの時期の旅行をどのタイミングで売るのが効果的か、旅行会社はノウハウを蓄積しているからだ。山形デスティネーションキャンペーンでも旅行会社への売り込みに成功した事例は全国からの送客ルートを開拓できた。次に個人対策。交通、宿泊情報をインターネットで調べ、組み合わせて予約する個人に対しては宿泊予約などのサイトで、本県情報を見てもらうことが大切と指摘する。旅行雑誌やテレビ、新聞を含め、発信する際に重要なのは漠然とPRするのではなく、「これが山形の魅力と明確に打ち出すこと」とした。

 ■戦略的不平等
 昨年の式年遷宮で伊勢神宮(三重県)ブームを巻き起こした御遷宮対策事務局の奥野勇事務局長は「“戦略的不平等”な情報発信が必要」とした。知名度の高い伊勢神宮を優先的にポスターなどに採用し、消費者の目を引くというのだ。公的機関が音頭を取る場合、全エリアに配慮した結果、盛り込む素材が多過ぎて印象が薄くなるケースがままある。「伊勢神宮を入り口に、来てくれた観光客が三重県各地を回ってくれたらいい」(奥野事務局長)。こうした考え方が、本県にも必要になる。
やまがた観光復興元年 記事一覧
文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大

県内8市発行メールマガジン登録無料

ふるさとだより

毎週木、金曜日配信中!

ニュース特集

スポーツ

教育・子育て

おでかけ

暮らし情報

twitter発信中

山形新聞からお知らせ

  1. 【2019年8大事業】
     山形新聞、山形放送の2019年の8大事業が決まりました。詳しくは、こちらから
  2. 【やましん公式FB】
     山形新聞社は、インターネット交流サイト「フェイスブック(FB)」の公式ページを新設しました。
     公式ページでは山形新聞のニュースのほか、本社からのお知らせなどを中心に紹介します。
     アドレスは、こちらから
  3. 【やましんe聞で動画視聴】
     読者限定の電子版「やましんe聞」で動画を閲覧できる新サービスを始めました。詳しくは、こちらから。
  4. ◆中学、高校の各種スポーツ大会の記録を紹介。検索機能も備えています。アクセス方法はこちら
  5. ◆探したい記事がきっと見つかる、山形新聞記事データベース。他社DB横断検索が便利な日経テレコンジー・サーチファクティバ
  6. ◆県外でも今日の朝刊が朝一で読める「お届け電子版
  7. ◆ニュース速報、高校野球、モンテ情報… 身近な情報を携帯で確認「モバイルやましん
  8. ◆故郷の話題をメールでお届け、ふるさとメール会員募集(登録無料)
山形新聞から
販売から