やまがた観光復興元年

第10部・全国とどう戦うか[6] 岐阜の海外戦略(中)

2014年12月25日
岐阜県民が伝承してきた「地歌舞伎」。観光資源として活用され始めている=同県中津川市・東美濃ふれあいセンター歌舞伎ホール
岐阜県民が伝承してきた「地歌舞伎」。観光資源として活用され始めている=同県中津川市・東美濃ふれあいセンター歌舞伎ホール
 華やかな歌舞伎の衣装をまとった役者が見えを切る。その瞬間「日本一!」の掛け声と「おひねり」が飛び、カメラのフラッシュがたかれた。11月、岐阜県民が伝承してきた地歌舞伎をフランスの国際観光展で上演した時の光景だ。

 岐阜県の海外戦略の特徴は観光と食、県産品を三位一体としてPRし、岐阜そのものをブランド化する手法だ。土台となったのは2008年度に県が始めた「じまん運動」。県民らから岐阜自慢を募り、全国区の観光資源になると期待される伝統行事・文化、景観、農産物などを「岐阜の宝もの」に認定し、文化的背景を含めて魅力を県外に発信する。海外戦略は、この運動が発展し、県を挙げたプロジェクトとなった。

 地歌舞伎は09年度に宝ものに認定された。県内には29の保存会があり、築100年超の芝居小屋や貴重な衣装も残る。従来は年1回、保存会ごとに定期公演が行われていたが、公演には人手も時間も資金も掛かる。そこで演目をコンパクトにした観光プログラムを開発。掛け声などで舞台に参加できる地歌舞伎ならではの楽しみ方を解説することにし、化粧、着付けの体験や舞台裏の見学も用意した。

 旅行会社への営業を行い、国内外で開く岐阜の観光物産イベントに役者が出演。それが月4、5回を数えることも。中でも上海万博(2010年)を皮切りに始めた海外公演は熱狂的に歓迎されるという。その結果、地歌舞伎鑑賞・体験を含むツアーの客数は12年度で220人に。定期公演の客も増え、かつては空席が目立つこともあった小屋は、どこも数百人の観客で満員状態となっている。

岐阜県産の家具や土産品など「岐阜ブランド」を一堂に集め、観光客らに発信するJR岐阜駅内のギフトショップ=岐阜市
岐阜県産の家具や土産品など「岐阜ブランド」を一堂に集め、観光客らに発信するJR岐阜駅内のギフトショップ=岐阜市
 観光と食、県産品、そして文化を一体的に発信するのはなぜか。岐阜県観光交流推進局の古田菜穂子顧問(53)は説明する。「岐阜の食や工芸品は、こういう歴史、風景の中、こういう気質の人に育てられたから高品質になったと、五感で実感してこそ選んでもらえるものだから」

 米粉製品の製造、販売を手掛ける企業レイク・ルイーズ(岐阜県海津市)。世界遺産・白川郷のある白川村でコメの生産から加工まで行った米粉ラーメンを「白川郷 米のらーめん」として村内の土産物店や飲食店に卸す。輸出にも挑戦し、県などの海外プロモーションに積極的に参加。2年前、村の要請に応えて村内に工場を設け、世界的知名度のある白川郷ブランドを活用できるようになった。堀田茂樹社長(50)は「白川郷への外国人観光客が増えることで製品の売り上げが伸び、それによって白川郷がPRされ、さらに観光客が増えるというプラスの循環につなげられたら」と話す。

 ■部局横断し調整
 海外戦略を主導する県は各課担当者でプロジェクトチームを結成。部局を横断する調整は広告・事業企画を手掛けていた民間出身の古田顧問が先に立ち、職員に示した。成果が出るにつれ、連携が密になったという。今では予算も各課で「機動的に融通」し合っている。

 もう一つ、岐阜の海外戦略の特徴が効果的なトップセールス。本県を含め全国の自治体が取り組んでいるが、岐阜では事前調査、準備を徹底する。国や公的機関の情報を活用するとともに県職員らが現地に足を運び、消費者ニーズ、企業や個別店舗の生きた情報を収集。富裕層に強く、地域の流行をつくるような企業、個店に飛騨牛や陶磁器、家具を売り込み、知事が行く前に販路を開拓しておく。

 その際、委託費を企業側に支払って販路を確保する一般的な手法ではなく、商品の価値を理解し自社の事業として販売してもらうことを目指す。

 次に事前にターゲットにする企業や個店の担当者らを海外から岐阜に招き、地域の歴史や風土の魅力をアピールする。岐阜ファンになった担当者が帰国後に職人の技の素晴らしさ、岐阜の観光の魅力を語ってくれるようになれば、日本人が語る以上のPR効果があるからだ。これらの取り組みによって土壌を整えた上で、知事が出向き、政府要人らに直接働き掛けることで成果を挙げている。

 ■国内も一体的に
 一連の海外戦略で飛騨牛の輸出量は2013年度に9・5トンを記録。戦略を始める前の08年度の29倍だ。陶磁器などの販売店舗も増えている。

 国内でも一体的な発信を展開する。県は今年9月、JR岐阜駅内にギフトショップをオープン。無形文化遺産にも登録された本美濃紙(和紙)や飛騨の木工、関の刃物、食品が幅広くそろい、土産店やショールームの役割を果たしている。
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