やまがた観光復興元年

第10部・全国とどう戦うか[7] 岐阜の海外戦略(下)

2014年12月26日
タイからの観光客にあいさつする花兆庵の女将・有巣栄里子さん(左)。外国人旅行者の温かい迎え入れが、地域への誘客を促進している=岐阜県高山市
タイからの観光客にあいさつする花兆庵の女将・有巣栄里子さん(左)。外国人旅行者の温かい迎え入れが、地域への誘客を促進している=岐阜県高山市
 江戸時代の面影を残す町並みで知られる岐阜県北部の高山市。同県の主力観光地の一つで、酒蔵や土産物店が並ぶ通りはアジアなどからの観光客でにぎわう。外国人宿泊者数は2013年で22万5千人。県が主導して展開する海外戦略の効果もあり、12年の1.5倍に急増した。宿泊客全体の1割が外国人とあって、飛騨牛ずしの店や朝市で、地元の“おばちゃん”たちが英語で対応する姿が当たり前に見られる。

 本陣平野屋花兆庵。もてなしを重視する日本旅館だ。2~3年前から毎日のように外国人観光客が宿泊するようになった。外国人も玄関で靴を脱ぎ、温泉に入り、地元の食を味わう。日本文化に触れる貴重な体験ができる半面、戸惑うことも多い。そこで、接客の中で気付いたことからきめ細かに対応していった。

 最初に英語の献立を作成。館内の案内、温泉の入り方、浴衣の着方などの説明書きを加えた。紙に頼り過ぎず、できるだけ従業員が言葉で伝えるようにした。交流が思い出になると思ったからだ。英語が得意な人材が豊富なわけではなく、従業員は日々英語を勉強した。ともに学んできた女将の有巣栄里子さん(54)は「片言でも一生懸命コミュニケーションを取ろうとするとお客さまが喜んでくれる。やってみたら何とかなった」と笑みをこぼす。

 行政が作る多言語対応の観光パンフレットも歓迎に一役買う。花兆庵では市が作成した9言語の町歩きマップを館内に並べ、活用する。「行政、民間それぞれの役割がある」と有巣さん。外国人旅行者の誘客は、迎え入れる人々が努力し、協力してこその地域活性化事業だ。

 岐阜県は海外戦略で、観光と食、県産品の一体的発信と同時に魅力的な旅行商品やルートづくり、環境整備を地道に続けてきた。

 その中で生まれた新たな旅の代表格は、御嶽山の裾野に点在する滝を結ぶガイド付き滝巡りや地歌舞伎の観賞ツアー。これらと世界遺産・白川郷や酒蔵巡りなど県内素材を組み合わせてルート提案する。さらに県境を越えて連携し、金沢市や日本アルプス(長野県など)を合わせた広域ルートも国内外でPRしている。

 岐阜県にとって、来年春の北陸新幹線金沢延伸は「プラス材料」(古田菜穂子岐阜県観光交流推進局顧問)だ。金沢から白川郷までは車で1時間少し。さらに1時間で高山市だ。東京―金沢―岐阜を結び、さらに京都を周遊する旅がしやすくなる。

■次の狙いは欧州
岐阜県を代表する観光地の一つ・高山市。県は地理的に近い金沢と高山を組み合わせたPRも行う
岐阜県を代表する観光地の一つ・高山市。県は地理的に近い金沢と高山を組み合わせたPRも行う
 アジアからの誘客実績をステップに、岐阜が次のターゲットとするのは欧州だ。個人客がメーンで、「そこにしかない本物を求める市場」とされる。そのため15の体験型プログラムを用意した。世界17カ国で販売されている旅カタログ「スマートボックス」に商品として掲載し、11月にフランスで行ったトップセールスに合わせて発売した。

 体験型プログラムには、紙すきや地歌舞伎観賞のほか、郷土料理の華ずし作りも。切ると断面に花やチョウの模様が現れる巻きずしで、講師は家庭の主婦たち。フランスでのプロモーションにも参加し、腕を振るった。

 外国人を迎える環境整備では、県内移動に便利なレンタカーを利用しやすくする事業にも取り組んだ。県が中日本高速道路に働き掛け、外国人向けの高速道路乗り放題パスの商品化を実現。中部国際空港(愛知県)から岐阜、金沢まで利用できるタイプなど2種類が2012年3月、初めて発売された。その後利用可能エリアは拡大。現在は東京から名古屋、富山、松本までが2~14日間乗り放題だ。

■地道な継続重要
 岐阜の関係者は継続の重要性を口々に話す。例えば、観光誘客を目的にした知事の海外トップセールス。本県は10年度以降で9回なのに対し、岐阜は海外戦略を本格化した09年度以降で15回を数える。現地旅行会社やメディアを県内に招く事業は毎年50回を数え、海外での旅行博やセミナー開催は10年度から今年11月までに76回を重ねた。

 古田顧問は13年12月から本県のASEAN戦略アドバイザーを兼務する。両県の事情を知る古田顧問は強調する。「旅行博などに参加し続けなければツアー造成や商品取引につながる『顔の見える関係』を構築できない」
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