山形再興

第1部・先端研究の求心力 鶴岡サイエンスパーク(3)

2018年01月05日
塩沢明子さんは、自身が勤務する慶大先端生命科学研究所から新しい才能が開花する様に触れることに幸せを感じる=鶴岡市
塩沢明子さんは、自身が勤務する慶大先端生命科学研究所から新しい才能が開花する様に触れることに幸せを感じる=鶴岡市
 鶴岡市のサイエンスパークは多彩な人材を引き寄せる。その中核施設・慶応大先端生命科学研究所で渉外を担当する塩沢明子さん(45)は、都内のシンクタンク勤務を辞め、生まれ育った横浜を離れて鶴岡に移り住んだ。そして、地元の男性と結婚した。長男を出産する夏の日の朝、病院の窓から真っ青な空の下に裾野を広げる鳥海山が見えた。初産の不安が薄らいでいくような気がした。今春、長男は小学4年生になる。

 「女性にとって出産はとても大切なこと。子どもは自分が納得のいく環境で産みたかった」「横浜や東京で子どもを産みたいという気持ちにはならなかった」。塩沢さんにとって「人と人との結び付きが保たれ、子どもをみんなで育てようという気風がある」鶴岡は「納得のいく環境」が整った土地だった。

 年間2千~2500人に上る視察者の応対をこなす。世界的研究者を育成するため、先端研が地元の高校生を「特別研究生」「研究助手」として受け入れる事業にも携わっている。「この研究所で、地元の高校生たちが夢中になれるものを見つけ、どんどん新しい才能を開花させていく様を近くで見守れることに幸せを感じる」。塩沢さんは、先端研で働く感動をこう表現した。

 会計事務所を辞め、100万都市の広島市から人口13万の鶴岡市に移住し、「YAMAGATA DESIGN(ヤマガタデザイン)」に転職した四ツ井栄治さん(31)は、新しい仕事に手応えを感じている。

 「会計事務所では、顧客との関係が希薄になってしまった。本来、仕事の相手は『人』であるはずなのに、いつの間にか『数字』になっていた」という。経理を担当する今は「自分の仕事が地域に役立っているという実感がある。『数字』の先に地域があることを肌で感じ取れる」。四ツ井さんには、庄内という地域に密着してまちづくりに挑戦している会社の一員として働く喜びがある。

「地域に密着した仕事がしたかった」。急成長するホテル運営会社からヤマガタデザインに転職した市川弘行さん=鶴岡市
「地域に密着した仕事がしたかった」。急成長するホテル運営会社からヤマガタデザインに転職した市川弘行さん=鶴岡市
 市川弘行さん(46)は、ホテル運営会社として急成長する星野リゾート(長野県軽井沢市)から転職した。鶴岡市のサイエンスパークに今夏オープンする宿泊滞在複合施設「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE(ショウナイ・ホテル・スイデン・テラス)」の総支配人として開設準備に奔走している。

 北海道、千葉、島根、沖縄県西表島…。転職前は旅館の再生事業などで全国を転々と異動する生活だった。長くても3年で新しい土地に移り住んだ。「地域に密着した仕事がしたかった」「新しいホテルをゼロから立ち上げることに強い興味を持った」。2016年に鶴岡での生活を始めてからまだ間もないが、庄内でたくさんの人とつながっているという実感がある。

「やりたい仕事がやれる場所で働きたい」とベンチャー「メタジェン」に新しい職を求めた森友花さん=鶴岡市
「やりたい仕事がやれる場所で働きたい」とベンチャー「メタジェン」に新しい職を求めた森友花さん=鶴岡市
 サイエンスパークで起業し、「病気ゼロ社会の実現」をビジョンに掲げるバイオベンチャー「メタジェン」の研究員森友花さん(29)は大阪出身。「やりたいことがやれる場所で働きたい」と昨年4月、同社に入社した。

 山形に強いこだわりがあったわけではない。「やりたい仕事」を鶴岡に見つけ、移住を決めた。「ご飯が食べられて、日本語が通じればどこにでも行く」という森さんも「雪は観光で見るものだった」と、早い時期から降り出した今冬の雪に苦笑した。しかし「サイエンスパークは若い人が多く、エネルギーにあふれている。みんな元気だし、明るい」。新たなヘルスケア産業の創出を見据えて腸内細菌に着目し、社内で「茶色い宝石」と呼ぶ便と向き合う日々は充実している。

 サイエンスパークでは約400人が働いている。この空間で大切にされている文化は「普通じゃないことをすること」(冨田勝先端研所長)。「自己保身」「安定志向」「挑戦回避」。この対極に価値を見いだす人たちによって新しい仕事が生み出され、まちが創造されている。
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