山形再興

第6部・スーパー公務員の力 (1)米沢市・相田隆行さん

2018年06月25日
「米澤すずめ衆」の若者と、道の駅「米沢」ですずめ踊りを披露する相田隆行さん(中央)=米沢市
「米澤すずめ衆」の若者と、道の駅「米沢」ですずめ踊りを披露する相田隆行さん(中央)=米沢市
 「相田です。よろしくお願いします」。米沢市総合政策課地域振興主査の相田隆行さん(43)=米沢市中央3丁目=の名刺には、「愛」の前立てのかぶと姿の似顔絵が描かれている。裏返すと「主な活動」として「地域づくり大学生サークル『アクセルリンク米沢』(サポーター)」「夢プロジェクト第2弾『米澤(よねざわ)すずめ衆』(発起人&世話役)」など、13もの項目がずらりと並ぶ。

 特に目につくのは、大学生を中心とした若者絡みの活動だ。「米沢の学生って何をしてるのか」「若者は地域づくりに興味がないのでは」―そうした自身の認識が一気に覆ったのは、2011年3月の東日本大震災だったという。

 震災の3日後、米沢市営体育館は700人もの避難者であふれ返った。初めて経験する大規模な避難者受け入れに大混乱する現場。そんな中で対応に当たった相田さんにとって、頼りはボランティアで駆けつけてくれた大学生や高校生だった。早朝から夜まで懸命に働く学生たち。「こうした若い人が活躍する場をつくりたい」―その思いは同年春、現在の部署に異動して一気に具体化した。

 米沢市職員の相田隆行さん(43)にとって、東日本大震災があった2011年は大きな転機となった。前任の観光担当時代から、甲冑(かっちゅう)姿で全国を飛び回るなど、市職員の中では異色の存在だったが、地域振興の担当になったことで、やりたいことと仕事ががっちりかみあった。

 この年、総務省自治財政局長だった椎川忍さん(現・地域活性化センター理事長)に出会い、勧められて地域再生のモデルケースとして知られるやねだん(鹿児島県鹿屋市串良町柳谷集落)の故郷創世塾に参加。豊重哲郎塾長ら、後に地域づくりの師匠と仰ぐ人たちと知り合った。

 「若者が活躍する場」づくりは同年、無人販売イベント「棒杭市(ぼっくいいち)」運営への参加を市内の大学生に呼び掛けることから始めた。当初は15人だったが、翌年には市内の学生たちがアクセルリンク米沢を組織し、棒杭市も「なせばなる秋まつり」に組み込まれてスケールアップ。アクセルリンクの会員は今や150人を超え、さまざまなイベントで活躍している。

 「ゆるやかな若者同士のつながり」(相田さん)を目指した「夢プロジェクト」は映画上映、米澤(よねざわ)すずめ衆、「竹あかり×ゆき×祈り」と続いた。他にも大沢地区の空き家を交流拠点として活用する「030(おおさわ)秘密基地プロジェクト」管理人、日本地域創生学会の全国自治体職員の集い部会長など、とにかく活動は幅広い。

 もっとも相田さん自身は元々、小学校時代の“熱血担任”にあこがれ、小学校の教員志望だった。大学卒業後、小学校で講師をしながら、友人の付き合いで米沢市役所を受験、採用されたが、教職の道を諦めたわけではなかった。

 「新人研修でも『民間ではこうですよ』などと意見していた。ずいぶん生意気でしたね」と笑う。しかしプライベートで国際交流イベントを企画したり、飯豊少年自然の家でボランティアの指導員を務めたりするうち「自分は教員というより、あの先生のように人のいいところを引き出すような仕事をしたいのではないか。それなら市職員でもできる」と気付いたという。

 当初から一貫しているのは「人の役に立ちたい」という思い。だが手法は次第に変わってきた。「昔は何でも自分でやろうとしたけど、今は『一人の百歩より、百人の一歩』がモットー。その方が地域が元気になるし、感動や感謝の輪も広がる。自分がやるべきなのは人と人とのパイプ役、活躍の場づくり。プロデューサーでいい」

 地域づくりには、ヨソモノ、ワカモノ、バカモノが必要、と言われる。相田さんの取り組みもあって米沢では大学生というヨソモノ、ワカモノの活動の場が広がってきた。残るバカモノを自任するのはもちろん相田さん自身だ。「公務員の強みは(組織に)守られていること。だからこそ挑戦したい」。その思いを胸に、相田さんは市内各地に“出没”する。

 お堅く「前例主義」のイメージが強い公務員だが、型破りで外に人脈を広げる「スーパー公務員」が全国的に注目を集める。県内でも、多彩な活動を展開し、光を放つ公務員がいる。年間企画「山形再興」第6部は、挑戦し続ける市町村職員を取り上げる。
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