山形再興

第7部・出生率高める 岡山・奈義町の取り組み(3)

2018年07月30日
 合計特殊出生率2.81を記録した岡山県奈義町は施策の方向性の一つに「若者の定住支援」を掲げている。町民や移住者に安心して子どもを産み育ててもらうには、出産・子育てに関する支援だけでなく、居住環境の整備が不可欠という考え方だ。 

旧雇用促進住宅をリニューアルした「センタービレッジ奈義」には、移住者を含め多くの若い世代が暮らしている=岡山県奈義町
旧雇用促進住宅をリニューアルした「センタービレッジ奈義」には、移住者を含め多くの若い世代が暮らしている=岡山県奈義町
 県北東部に位置する人口約6千人の奈義町は、10万都市の津山市、2万8千人弱の美作市と隣接する。いずれも車で30分程度で行き来できる距離のため、若い世代は規模が大きい両市へと移り住んでしまう傾向にある。それを表すデータの一つが、町の2005~10年の人口移動状況。男性は20代から40代に転出超過がみられ、都市部への就職などが要因と分析されている。女性も進学や就職をする20代前半の転出超過が目立つ。

 加えて結婚などを機に、町外で新たな生活を始める人たちが多いという課題を解決しなければならない。だが町には民間のアパートが少ない上、町営住宅は家賃が安いものの古く、若者にとって魅力的とは言いにくかった。ならば行政として住む場所を準備しようと、町は若者向け賃貸住宅の建設事業に着手した。
 岡山県奈義町は現在、4カ所に町営の賃貸住宅を設けている。集合住宅と戸建ての2形態があり、合計戸数は81。いずれも月額の家賃は割安にしており、入居率は全体で98%と好評だ。実際に住んでいる人たちは町内出身者、町外からの移住者が、ほぼ同じ割合だという。

 このうち集合住宅の「センタービレッジ奈義」は、町中心部の雇用促進住宅を町が取得し、室内をリニューアルした建物だ。2015年3月に入居を開始。現在は60戸がほぼ満室で、計128人が暮らしている。3DKの間取りで1、2階の家賃は3万円。3階は2万5千円、4階と5階は2万2千円に設定しており、「若い人が多く住んでくれている」(同町)という。

 戸建てについては住宅団地2カ所に計17戸を整備しており、全て入居済みだ。このうち「グリーンビレッジ奈義」(12戸)の場合、木造2階建てで間取りは3LDK。用地取得事業に始まり、インターネットの環境も整えるなどし2014年度に完成した。国庫補助などを活用し、整備費用として2億6582万円を投じた。

 これらの賃貸住宅整備は「新婚家庭が住みたくなるような家」をコンセプトにした。事業展開は功を奏したと言え、現在、5カ所目の整備に向けて土地取得の準備を進めている。

 居住環境の充実に注力する奈義町だが、町内には高校がない“ハンディ”を抱える。中学を卒業する生徒は毎年50人ほどで、隣接する津山市や美作市の学校に通う。町内を走る電車がないことから、通学するためにバスを利用するが、定期券の購入には毎月約2万5千円の費用がかかる。子どもの数が多い家庭ほど出費がかさみ、高校進学に伴い家族で引っ越してしまうケースもある。

子育て支援だけでなく、定住化に向けた取り組みにも力を入れる奈義町。さまざまな施策の積み重ねが、合計特殊出生率の向上につながった
子育て支援だけでなく、定住化に向けた取り組みにも力を入れる奈義町。さまざまな施策の積み重ねが、合計特殊出生率の向上につながった
 少しでも経済的負担の軽減につなげようと町が展開するのが、高校就学支援金交付事業。07年に制度の運用を開始し、現在は1人当たり年額9万円を3年間支給することとしている。

 奈義町では、子育て支援や定住化を図るきめ細かな施策の積み重ねが、合計特殊出生率2.81に結び付いていた。一方で町情報財政課の佐々木伸江副参事は「他の自治体も私たちと同じような取り組みを始めたら、今の施策が“普通”になってしまう」と危機感も口にする。「奈義町の特徴は何かを意識し、継続して新たな施策を考えていく必要がある」。現状に満足することなく町の少子化への挑戦は続いている。
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