山形再興

第9部・空き家解消への道(1) 朝日町ゲストハウス

2018年09月26日
空き家だった古民家を活用したゲストハウス「松本亭一農舎」。地域住民やスタッフとの交流を求め、県内外から若者が訪れる=朝日町常盤
空き家だった古民家を活用したゲストハウス「松本亭一農舎」。地域住民やスタッフとの交流を求め、県内外から若者が訪れる=朝日町常盤
 朝日町常盤の主要地方道から50メートルほど入ると、蔵付き住宅が目に入る。一見、通り過ぎてしまいそうな一軒家だが、週末の夕方にもなると、県内外の若者たちが次々にやってくる。入り口の案内板には「松本亭一農舎」の文字。明治時代の古民家を活用し、昨年1月にオープンしたゲストハウスだ。

 十数年前に町が所有者から寄贈を受け、ここ数年、空き家となっていた建物を改修。町内の地域振興サポート会社「まよひが企画」(佐藤恒平代表)に管理運営を任せ、簡易宿所としてよみがえらせた。現在は同社の若いスタッフ3人が交代で常駐する。

 車がなければ来られない場所だが、オープンから今年3月末まで15カ月間の延べ宿泊者は約400人を数えた。今年は4月から8月末までで既に250人以上に上り、リピーターも増えている。宿泊者の約7割は10~30代の若者だ。「3千円以内で泊まれるという理由ももちろんあるが、宿泊者の多くは同じ価値観を持った人たちと話したり、地域住民やスタッフと交流したりすることを求めて“わざわざ”訪ねてくれる」と佐藤代表(34)。常連客の中には、ここでの滞在がきっかけで、朝日町に移住した人もいる。

 明治時代の旧家を活用した朝日町のゲストハウス「松本亭一農舎」は、かつて「一農舎」という私設の農業塾が開かれていたという。その後、購入した人の名字から「松本邸」と呼ばれ、それが名前の由来でもある。太いはりや古い建具、内装などを生かした建物は落ち着いた雰囲気を漂わせる。相部屋、個室合わせて四つの和室と自炊用の共用台所、風呂場などを備え、Wi―Fi(ワイファイ)環境も整う。宿泊料は1人1泊2500~3千円だ。

 ゲストハウスの利用にとどまらない。午後1~7時はコミュニティースペースを無料で開放。地元住民と宿泊客、あるいは住民同士の交流の場となる。商店主などが商品開発会議を開いたり、打ち合わせをしたりするコワーキングスペース(共同オフィス)としても使われており、「気分を変えたいときなどに多角的に使われているマルチ館」(佐藤恒平代表)だ。

 9月中旬の週末の夕方、松本亭前には県外ナンバーの車が並んだ。この日の宿泊客は関東や仙台から来た1グループと2個人の男女計5人。スタッフも交えて自炊した夕食を食べながら、仕事や趣味などの話をし、夜遅くまで笑い声が飛び交った。「学生時代から全国各地のゲストハウスを訪れているが、ここは古民家の落ち着いた雰囲気もいいし、気兼ねせず楽に過ごせる」と東京に住む国家公務員の男性(25)。寒河江市内での研修後に個人的に訪れたという。そんな若者たちの多くがインターネットでこの場所を見つけ、引きつけられるようにやってくる。

 自動車メーカーの開発エンジニアという中村哲也さん(45)=川崎市=は常連だ。町内で空き家改修にも関わっており、この日も知り合いの町民宅で夕食をごちそうになってから到着。「ここに来て人と触れ合うと、人間らしくなれる。退職後の第2の人生を楽しむ場としてもこの町にすごく興味がある」と話した。

 管理人の阪野正義さん(32)らスタッフは、予約管理や顧客情報をメールのやりとりで共有する。副業を持つ阪野さんは「ここは地方の現場型事業に(職場以外で働く)テレワークを導入する実験の場でもある。客がいないときに、スタッフ全員が常駐しないでも楽に運営できる仕組みを研究している」と話す。

 さらに佐藤代表は、松本亭の取り組みを、将来の集落公民館などの活用に当てはめ、モデルケースにしたいという。「人口減少の中で、地域の公民館やコミュニティーセンターの運営が難しくなる時代は必ず来る。そのときに、公民館をゲストハウスにして宿泊で利益を上げながら交流・発信の拠点にできれば、田舎暮らしを求めてやってくる人たちの移住にもつなげられるだろう」。柔軟な発想による空き家活用の試みはまだまだ続きそうだ。

   ◇   ◇ 

 空き家対策が各自治体の大きな課題となっている。年間企画「山形再興」第9部は、県内で進む空き家を活用した地域活性化、危険解消や景観回復の挑戦を取り上げ、モデルケースとして示す。
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