県内、特殊詐欺の実態~闇に迫る

第3部[上]姿を隠す犯行グループ 追い続けた男、ついに

2016年02月12日
 「ずっと、この男(遠藤浩史容疑者)の所在を捜していた」。かみしめるような現場の捜査員のつぶやきが聞こえた。建国記念の日でごった返す東京都羽田空港の到着ロビー。こわばった表情で何度も容疑者確保の際の配置を確認する。「失敗は許されない」と緊張しているのか、それとも、「ついに捕まえる」という武者震いか。おそらく両方だろう。全捜査員から同じ感情が伝わってきた。

 県警が力を入れている特殊詐欺事件捜査の最前線に密着取材した。県警が追っていたのは米沢市で昨年5月に発生したオレオレ詐欺事件で「受け子」グループのリーダーとみられる遠藤容疑者。拠点を特定し、捜査員が出向いて任意同行を求めたいものの、遠藤容疑者は捜査をかく乱するかのように、決まった居住地を持たず、全国を転々としていたとみられる。

 「沖縄にいるようだ」。県警に入った情報に捜査員は色めき立った。「11日に東京に来る可能性がある」との有力情報も入った。「羽田だ」。県警は遠藤容疑者が羽田空港に到着したところで捜査員がその場で任意同行を求め、詐欺容疑での逮捕状を執行するシナリオを描いた。条件は整った。11日午後。羽田空港の到着ロビーには目立たない服装をした捜査員が続々と集まってきた。

 「白いトレーナーに灰色のズボンを着用。マスクに眼鏡を掛けている」。遠藤容疑者が那覇空港で飛行機に乗り込んだ時の姿を全員が共有。修学旅行生や春節(旧正月)の休みを利用して観光に訪れた中国人の団体でごった返す中、到着ロビーに向かって歩いてくる遠藤容疑者の姿を全捜査員がガラス越しに注視していた。

 「来た」。ゲートを出た瞬間。全捜査員が素早く取り囲む。遠藤容疑者は任意同行を求める捜査員の言葉に目を見開いた。「連絡を取りたい」「連絡を取らなければならないところがある」。それは弁護士を呼ぼうとしているのか、遠藤容疑者が捜査員に要求するそぶりを見せた。最後まで納得した表情を見せなかったが、捜査員に促されて空港施設を出た。捜査車両に向かうまで約5分。その後、到着ロビーは旅行客を迎えるいつもの姿に戻った。

 到着ロビーに入ってきた時の遠藤容疑者は一見しただけでは同じく沖縄旅行を楽しんだと思われる人たちと変わらぬ様子だった。主に電話で被害者に接触を図ってくる特殊詐欺の犯行グループは姿が見えない。しかし、その実態は「一般人を装って生活している」―。このことに被害が後を絶たない特殊詐欺問題の根深さを見た。

   ×    × 

 全国的に社会問題となっている特殊詐欺の真相に切り込む「闇に迫る」第3部は犯人グループを追う捜査の最前線をルポ。犯行グループの潜伏先と公判を通して逮捕、起訴された被告の人間像にも迫る。
(特殊詐欺取材班)
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