21世紀山形県民会議

テーマ:地方創生へ インバウンド拡大

東北中央自動車道大石田村山―尾花沢間の開通式。インバウンド拡大に向けて高速道建設などインフラ整備が欠かせない=村山市土生田 東北中央自動車道大石田村山―尾花沢間の開通式。インバウンド拡大に向けて高速道建設などインフラ整備が欠かせない=村山市土生田
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戦略とアイデア

 ―1巡目の発言を踏まえ、具体的な戦略やアイデア、今後の展開をお聞きしたい。

 吉村 海外からの誘客には新たな市場の開拓が必要。滞在期間が長く、観光消費額が大きい欧米豪の旅行者を呼び込みたい。蔵王のスキーなど本県の観光素材が持つ高い訴求力を生かして戦略的な誘客事業を検討し、実施する。空路を巡る新たな動きとして先月、国内最大級のLCCジェットスター・ジャパンより、庄内―成田線の就航検討の表明があった。地元市町や経済団体などと受け入れ態勢を整え、早期の就航を目指す。奥羽・羽越新幹線の実現に向けては、山形新幹線の福島―米沢間の新トンネル整備の早期事業化へ、財源スキームなどについて検討を進めている。海路では、観光消費額の拡大が期待できる外航クルーズ船について、酒田港への寄港を拡大するため、官民連携による誘致活動などを強化する。

 土田 山形空港の滑走路延長は空港所在地の市長として賛成だ。「県民が利用する朝晩の時間帯に運航すれば、新幹線との共存共栄は可能」と言い続けてきた。現在の状況は一定の成果を上げている。滑走路延長は海外便就航の可能性を広げインバウンド拡大につながる。新幹線のフル規格化よりもスピード感を持って対処できるのではないか。ただ、一部道路のアンダーパス化が条件となる。国道48号は重要物流道路への指定を目指しており、来年3月までに1次指定が決まる。ぜひ実現させたいと思っている。また、3年前にサクランボのトップセールスでタイを訪れた際、訪日客に旅先で食したものを本国で口コミでPRしてもらうことが最も効果的だと教わった。

 清野 外国人旅行者の来県を地方経済の発展に結び付けるため、消費を促したい。その鍵は3点あり、最初が山形の強みを生かすこと。東北各県が冬の観光をPRする中、外国人が最も魅力的に感じる雪や冬のイベントのPRに力を入れ、食、伝統文化、山岳信仰などの素材を組み合わせた観光ルートも提案したい。二つ目が情報通信網の整備だ。スマートフォンでの情報収集、SNSへの投稿を助けるため、無料の無線LAN「Wi―Fi(ワイファイ)」環境の整備が欠かせない。外国人対応観光案内所の整備促進も不可欠になる。最後が買い物手段の整備だ。環境さえ整えば消費の拡大につながる。店、商店街単独では対応が難しいが、商工会議所が後押しする。

 佐藤 住んで良い街は訪れて良い街。そこに住む人が「本当に幸せ」「山形は良いところだよ」と、声高に呼び掛けることこそが一番大切だ。山形は3世代同居率が日本一で、世代間の「和」に優れる。その点も含めて私は「山形こそスペシャル」と言い続けている。きめ細やかに情報を発信し、「何てハッピーな山形でしょう」と言い続けたい。かみのやま温泉には140年前、英国の女性旅行家イザベラ・バードが訪れている。その時にバードが評価し、今も残る原風景や日本の古き良きものを大切にしたい。天童、東根、上山のように、新幹線を降りて車で20分ほどの場所に温泉地がある地域は他にない。これを強みとしてインフラ整備につなげてほしい。

 熊谷 株価も物価も上がらない状況下、訪日観光客数は右肩上がり。インバウンドを生かさない手はない。本県は観光立国の条件となる気候、自然、文化、食の四つを兼ね備えており、大きなアドバンテージがある。東北に伸びしろがあるとよく言われるが、何かしら手を打たないと旅行客は来てくれない。Wi―Fiの整備など受け入れ体制に重点を置いてお金をかけるのではなく、誘客にも十分な額を配分する必要がある。また、海外から呼び込むだけではなく、こちらから海外に足を運ぶことも大切だ。例えば成人式のお祝いにパスポートを配れば、若者が海外に目を向けるいい機会になるのではないか。

 遠藤 中国のインターネット通販アリババを訪ねた時、「中国人が日本でおいしいものを食べると、中国でも食べたくなる」と言われた。農水相と全農幹部が、どうしたら中国で食材が売れるか議論していた。そういう流れは本県の農業をたくましくするきっかけになる。先ほどから「体験」がキーワードになっている。外国人から道場で柔道の練習がしたい、三味線や琴を弾きたい、山車やみこしをかつぎたいという希望がある。そうしたものを地域で体験し、そこでおいしい食べ物を味わってもらうことが大事。農業と観光を結び付けるなど新しい考え方も必要となる。

 鈴木 山陰地方の取り組みが参考になる。島根県の出雲大社の参道は、以前は出店が22軒しかない“シャッター通り”だったが、地元の方々と県が一緒に復活させ現在は70軒を超えている。羽田から出雲への飛行機の予約が取れないほど観光客が増えているという。鳥取県境港市の観光スポット「水木しげるロード」も20年ほどかけてつくり上げた歴史がある。統一感のあるコンセプトを持ち、皆で一緒に新しいものをつくっていく視点を持ちたい。例えば観光客が駅に着いた瞬間、感動を与えられるようなまちづくりを行政と民間で行いたい。30年先、50年先を見据えて取り組まないと、いくら交通インフラを整備しても人が来てくれないだろう。

 加藤鮎 ソフト強化の話をしたい。海外から東北や山形はどう見られているかという、訪日客の目線が大事だと感じている。プロデューサー的な役割を担う人材が育ち、活躍できるよう、国や行政が手助けしていく必要があるのではないか。通訳などの観光客と接する人材はある程度人数がいないと大変だ。国内の人だけでなく海外の方々から力を借りるという視点も必要。文化を次世代につなげ、外の目も持つという、自分の根っこが備わっている子どもたちを地域で育てていくことを考えていきたい。インバウンドが子どもたちの地域愛を育てるきっかけになるという目線も大切で、取り組みによって地域の長期的な活力や豊かさにつながっていけばいい。

 舟山 本県は一度来県した人の評価が高い。だからまず来県してもらうことに主眼を置きたい。他の都道府県を目指す旅行者の取り込みも重要になり、県外の交通拠点にPRスポットを置くなど工夫も大切だ。北海道に向かう外国人は多く、そこから山形に連れてきたい。海外はキャッシュレス決済が進んでおり、本県も対応を真剣に考えなければならない。初期投資の少ない機器も出てきた。気軽に、手軽に来県しやすい環境を整え、そこを入り口に奥に入って魅力を実感してもらうこともポイントの一つだ。本県は伸びしろがある。素晴らしい素材を提供する知恵を磨きたい。地域間、広域、業種間の連携の中でさまざまな取り組みを進めるべきだ。

 大沼 日本人は四季折々を楽しむ文化があるが、外国人旅行客の来訪、滞在は特定の時季に限られる。四季折々という概念を変えることも必要ではないか。春の雛街道を例に挙げると、閑散期の冬に飾って「山形に来れば1月でもお雛さまを楽しめる」というアピールの方法もあるのではないか。ロシアでは桜が人気だ。啓翁桜のように冬でも桜を提供できることをもっとPRしたい。「ものづくり県・山形」という意味では、山形仏壇、山形鋳物、米沢織、しな織りといった各地域の伝統工芸を海外の人に知ってほしい。そのためにも現場を見学できるような態勢をつくりたい。来る人の目線に立った、日本人の感覚にとらわれない発想が必要だ。

 ―最後に全体を通した感想や提言をいただきたい。

 古田 来県外国人30万人を目指す上で一人一人の顔を想像し、どんな時間帯にどんな行動をしてもらうかなど物語をつくるようにシミュレーションをしてほしい。一度誘客に取り組んだ国は、最低でも3年は継続してもらいたい。伝統工芸や祭りの体験など、山形ならではの魅力を再発見し、地域経済に結び付けることが大事だ。地域の人と一緒になり、真剣になって観光商品にすることが求められる。山形には出羽三山の精神文化体験や、上山のクアオルト(健康保養地)事業などがあり、心や体、精神の健康につながる。インバウンドを進めることは多様性への理解を進めること。それは平和産業でもあり、山形がそれを引っ張っていってほしい。

 加藤一 山形の2空港の課題は明確で、いち早く利用拡大を図ることだ。ターゲットを一つに絞るのではなく、分散させる方がいい。もう一つ大切なのは継続性だ。全国的に海外の航空会社が就航した路線で長く続いているものは多くない。うまくいかなかった場合はすぐに引き上げてしまうからだ。そのような中で路線を維持しつつ、拡大するのは容易ではない。路線の維持拡大は常在戦場。常日頃から研究し、新しい施策をどのように展開するかをしっかり整理していけば、どこの県にも負けない政策ができると考えている。

閉会のあいさつ

山形放送社長 本間和夫

山形放送社長 本間和夫

 未来に向かって持てる力を最大限に生かし、インバウンドを増やして地方創生につなげるための貴重な意見、提言をいただいた。本日の議論を通じ、観光資源の豊かな本県が外国人観光客でにぎわい、その人たちが2度、3度と訪日を繰り返すような、旅行客に好まれるまちになるための道筋が見えたと思う。皆さんの提言や決意は大いに明日の山形を切り開き、県民の参考になると確信している。


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