社説

二極化進む地価 独自の施策で上昇図れ

 国土交通省が今年1月1日時点の公示地価を発表した。三大都市圏と札幌、仙台、広島、福岡の地方中枢都市の上昇に加えて、新たに地方圏の全用途平均と住宅地が27年ぶりにアップし上昇基調を強めていると言える。

 地価アップは第2次安倍政権が発足した2012年12月から始まった景気の拡大や低金利政策が主要因だ。さらに18年には前年に比べ8.7%増の3119万人となるなど訪日外国人旅行者の急増も後押ししている。

 ただ、この景気拡大も先行きは怪しい。今月7日に発表された1月の景気動向指数の速報値では、既に後退期に入った可能性が示された。米国と中国の貿易戦争もあり見通しは立てにくく、今後の地価動向への注視が必要だ。

 本県に目を向けてみると、対前年変動率は全用途平均でマイナス0.3%となったものの、9年連続で下落幅が縮まった。住宅地の変動率は、マンション需要が堅調な山形市の上昇などを要因にマイナス0.1%に縮小。商業地は山形市が2年連続でプラスとなった他、東根市も27年ぶりにプラスに転じたことなどからマイナス0.9%に縮小した。工業地はプラス0.5%で2年続けて上昇した。

 国交省土地鑑定委員会県代表幹事の月田真吾不動産鑑定士は、山形市が商業地、住宅地で一人勝ちの状況になっているとした上で、その背景には市中心部で進むマンションの建設や、旺盛なテナント需要などがあるとする。

 一方、人口減少が加速する市町部では、住宅や既存店舗の需要落ち込みなどを受け下落幅が拡大している所もある。都市部と周辺部の二極化、もっと言えば、交通の便が良くマンションや事務所ビル、店舗などの実需がある所は上昇するが、それ以外は下がるという地価の「個別化」が進んでいると分析できる。

 「地方創生」を掲げる安倍政権は、東京圏への転入者と転出者の数を「20年に均衡させる」との目標を設定したが、18年の人口移動報告では13万9868人もの「転入超過」だった。広域的な人の移転を国が誘導することは難しいと分かる。人口減少局面に入り、稼ぐ力を持つ世代の奪い合いが自治体の間で激化している。自治体が生き残るには、独自性ある政策を駆使して街づくりを進め、人口を増やし、地価を上昇させる施策が不可欠だろう。

 住宅地、商業地ともに上昇に転じた東根市は、特色ある独自の手厚い子育て支援策に加え、県内初の併設型中高一貫校・東桜学館の開校、市役所周辺への公共・商業施設を集積させた街づくりなどが地価上昇に大きく寄与していると思われる。子育て施策や教育施策を充実させ、転入者を増やし地価を上げることは、自治体の税収を確保する面からも重要だ。景気にあまり左右されず、人口増加にもつながる活性化策として参考になろう。

 人口減少を受け市街地を徐々にコンパクト化することは、利便性向上や効率化が図られ、新たな需要を生む可能性もある。空き店舗などが目立つ駅前や中心市街地の街づくりに責任を持ち、個性的な取り組みができる人や組織を育てることも地価の上昇には役立つはずである。

(2019/03/23付)
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