社説

酒田船凍いか 港町の名物に育てたい

 本県のイカ釣り船団の出航式が先月、酒田港で行われた。船団は本県のほか北海道や石川県の中型イカ釣り船13隻で編成。漁獲作業の指揮を執る漁労長のほとんどが酒田市飛島出身だ。この日は10隻が集結し、青空の下、カラフルなテープを手に豊漁と航海の安全を願う人たちに見送られ次々と船出した。

 これだけの数の中型船が繰り出す出航式は、全国でも酒田港だけに受け継がれている伝統だという。もともと乗組員の家族や関係者向けだったが、2017年から鮮魚店などが店を出し、観光客が楽しめるイベントに模様替えした。日曜日に行った今年は出店の数も増え、平日だった昨年を大幅に上回る人出となった。より多くの人たちを呼び込めるようPRに力を入れてほしい。

 出航式に関連して新たなアイデアも生まれている。酒田港に集まる中型船は出航式の数日前には入港する。そのうち何隻かに夜間、イカを引き寄せる集魚灯をつけてもらい、埠頭(ふとう)でバーベキューなどを楽しんでもらおうというものだ。船凍イカの塩辛や刺し身などを製造する山形飛鳥(酒田市)の五十嵐七朗社長は「賛同してくれる漁労長もいる。酒田に来る観光客を増やすため来年ぜひ実現させたい」と張り切っている。

 同港を出港した「酒田船団」は日本海の好漁場「大和堆(やまとたい)」「武蔵堆」などでイカの群れを追いながら来年2月ごろまで漁を続ける。船の数は全国で操業している中型イカ釣り船の約2割を占め、中には日本一の漁獲高を誇る船もある。

 中型船が漁獲したイカを船の急速冷凍機ですぐさま凍らせるのが船凍イカ。高い鮮度が保たれ、低温でアニサキスのような寄生虫も死滅する。主な水揚げ港は北海道函館、青森県八戸、石川県小木、それに酒田の4港。酒田船団の存在感もテコにして港町の名物に育てたい。

 中型船の入港は船凍イカの水揚げはもちろん燃料や食料、備品の調達などで港周辺に大きな恩恵をもたらす。その回数を増やすことが課題だ。全国の船凍イカ漁獲量の大半を占める函館、八戸の両港より大消費地の首都圏に近く、陸上の輸送コストが安く済む利点を生かし酒田港の水揚げを拡大したい。

 酒田市は先月、「酒田船凍いか」を商標登録したと発表した。同市のキャラクター「あののん」がイカを抱えたロゴマークとセットで登録。市民や観光客に船凍イカのおいしさと産地であることを知ってもらい、消費拡大につなげるのが狙いだという。「イカのまち酒田」のブランドづくりに役立ててほしい。

 酒田市の船凍イカの知名度は首都圏でも着実に浸透してきた。同市は友好都市である東京都武蔵野市で17年に「イカすぜ!酒田『イカまつり』in吉祥寺」を開催したのに続き、本年度も吉祥寺でのイベントを計画している。

 酒田港への外国クルーズ船の寄港が増え、庄内空港は格安航空会社(LCC)の就航が決まるなど庄内地方の観光振興に追い風が吹く中、関係者からは「イカを使った新メニューを考案し地元飲食店で提供してはどうか」といった声も聞かれる。交流人口拡大に結び付けるため知恵を絞ってもらいたい。

(2019/07/15付)
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