社説

南北首脳会談 関係維持して非核化を

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は、今年3回目となる文在寅(ムンジェイン)韓国大統領との南北首脳会談で、核施設やミサイル発射台などの解体、廃棄を盛り込んだ「9月平壌共同宣言」に署名した。

 北朝鮮は非核化の意思を繰り返し表明しているが、一方的な非核化は論外だとして米国に相応の措置を求め、米朝交渉は難航している。今回の会談結果を非核化への具体的措置に踏み出す転機としなければ、6月に初めて実現した米朝首脳会談の歴史的意義も色あせてしまう。トップ外交を維持し、北朝鮮の確実な非核化につなげなければならない。

 金委員長による早期のソウル訪問という破格とも言える合意も、トップ外交を続けなければ、再び不信と対立が悪循環する構図に逆戻りしてしまうという南北両首脳の危機感が根底にあるとみられる。

 偶然ではあろうが、13年前の同じ9月19日、北京で開催されていた6カ国協議は、北朝鮮の非核化と米朝、日朝関係の改善などを盛り込んだ共同声明をまとめた。だが、合意内容を履行する初期段階で頓挫した。南北両首脳は今回、共同宣言に署名しながら「13年前と同じ轍(てつ)は踏めない」と覚悟しただろう。

 今回の共同宣言は、トランプ米大統領と金委員長の仲裁に意欲を示す文大統領と、南北の平和共存を進めながら米国から譲歩を引き出そうとする金委員長の思惑を最大限調整した苦肉の作品とも言える。北朝鮮は北西部にある寧辺の核施設を永久廃棄するなどの追加措置を表明しつつも、「米国の相応の措置」を条件にした。一方で、北朝鮮が韓国に求める開城工業団地の再稼働や金剛山観光の再開を「条件が整い次第」実現するとうたった。持てるカードで非核化を誘導しようとする韓国の姿勢は鮮明だ。

 北朝鮮はこれまで、核・ミサイル問題は米国との交渉課題だとして、韓国の介入に難色を示してきた。米朝を仲裁しようとする文大統領の調整努力はそれなりに機能していると言える。

 しかし、北朝鮮が今回合意した東倉里のミサイル発射台や寧辺核施設の廃棄は、いずれも今後の核・ミサイル開発能力を封印するものだ。言い換えれば、「未来の脅威」を交渉カードにしているにすぎない。

 既に長年にわたり開発、配備してきた核兵器や大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む弾道ミサイルなどの「現在の脅威」には踏み込んでいない。核開発の実態を申告することが非核化の第一歩だとする米国の要求も、こうした「脅威の時間軸」に関連している。

 現実の脅威を除去する段階に進まなければ、北朝鮮が求める朝鮮戦争終戦宣言など安全保障の枠組み構築に応じることができないとするのが米国の立場だ。

 南北は軍事的緊張を緩和する合意文にも国防相レベルで署名した。まずは直接の戦争当事国である南北で、終戦宣言に向けた基盤づくりに入ったとも言える。

 国連総会を利用し、近く米韓首脳会談が予定されている。北朝鮮の非核化措置と米国の終戦宣言への関与を「取引」する環境を整えることができるかどうかが、次の課題だ。

(2018/09/20付)
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