社説

マンデラ氏 生誕100年 世界には和解が必要だ

 南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領が18日で生誕100年を迎えた。

 反アパルトヘイト(人種隔離)闘争を率いて白人主導政権下で弾圧され、27年半にわたり獄中生活を送った。一方で釈放された後は、為政者として人種間の融和と和解を説いた。クリント・イーストウッド監督の映画「インビクタス 負けざる者たち」で、そんなマンデラ氏の姿に接した方もおられよう。2013年に95歳で死去した。

 融和や和解に逆行する動きが世界各地で目に付く中、マンデラ氏の言動から学ぶべきことは今も多いはずだ。

 「監獄島」と呼ばれたロベン島の刑務所に服役していた頃、マンデラ氏は一人の白人看守と友情を育んだという。その看守はクリスト・ブランド氏。1978年、看守として赴任したブランド氏は、マンデラ氏について白人上司から「凶悪なテロリストだ。気を付けろ」と聞かされた。だが、マンデラ氏は「ミスター・ブランド」と優しく語り掛けた。ユーモアを絶やさない人懐っこさに次第に警戒心が薄れ、率先してトイレや床を掃除する姿に尊敬の念を抱いた。

 極寒の冬の夜も、マンデラ氏ら政治犯に与えられたのは薄い毛布だけ。家族との面会も制限され生活は過酷を極めたが「愚痴をこぼさず、いつも気高く振る舞っていた」という。約1年後、生まれたばかりの孫娘を家族が連れてきた際、刑務所は面会を却下した。ブランド氏は懇願され、子どもを所内に入れてはいけないという規則を破り30秒ほど抱かせた。マンデラ氏は涙をこぼした。「それ以来、人として信頼してもらえるようになった」とブランド氏は振り返る。

 「悪いのは人種隔離の制度であり、一人一人の白人ではない」がマンデラ氏の口癖だった。白人と親交を深めようと、ブランド氏から白人言語のアフリカーンス語を学習。釈放後に群衆の前で演説した際は、アフリカーンス語を交え多人種共存を訴えた。

 生誕100年を翌日に控えた17日、米国のオバマ前大統領が南アフリカの最大都市ヨハネスブルクで講演し、マンデラ氏を「本物の偉人」と称賛した。一方、世界の現状については「奇妙で不確かな」時代だと指摘した上で「恐怖や恨み」をあおるような政治状況に強い危機感を表明した。確かに、オバマ氏の後任のトランプ大統領をはじめ、国民や社会の分断をあおるような指導者が世界各国に増えているのは事実だ。

 米文壇で影響力を持つ日系人著名批評家ミチコ・カクタニ氏は先頃、米紙ニューヨーク・タイムズへの寄稿で、トランプ政権の不法移民への「不寛容政策」は第2次大戦中の日系米国人の強制収容と同じ「人種差別主義」に基づいていると痛烈に批判した。

 人種差別を巡っては日本にも気になる動きがある。「○○人は殺せ」「祖国へ帰れ」といった不当な差別的言動の解消を目的としたヘイトスピーチ対策法が施行されてから2年余りになるが、インターネットの世界などで悪意の発散はやんでいない。弱者をたたく強圧的な言動で事態は何も好転しないということを、冷静に自覚すべきだ。

(2018/07/20付)
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